2013 年 9 月 のアーカイブ

藤本宗将 13年9月22日放送


Macanadas
ナンバー2の男 スティーブ・ジョブズ

アップルの創業者であるふたりのスティーブ、
スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアク。

当時コンピュータ業界で尊敬を集めていたのは、
天才エンジニアであるウォズニアクのほう。
ジョブズはあまり評価されておらず、
彼のことを口先だけの詐欺師だと陰口をたたく者さえいたほどだ。

それぞれの評価はともかく、ふたりがガレージでつくりあげた
史上初のパーソナルコンピュータは評判を集め、アップルは急成長していった。

やがて設立から20年が経ち、
大企業となったアップルは社員番号制度を導入することになった。
事件は、そのとき起こる。
ふたりのスティーブが、ともに1番を欲しがったのだ。

どちらも創業者とはいえ、社員番号が同じというわけにはいかない。
検討の結果、1番はウォズニアクに与えられた。
傲慢なジョブズに1番を与えれば、さらに増長すると会社は考えたのだ。

ジョブズはその決定に猛然と抗議したが、訴えは聞き入れられず。
しかしナンバー2となることに納得しなかったジョブズは、
社員番号を「0」とすることでようやく妥協した。
もっとも社員バッジにそう書かれただけで、
会社のシステム上はあくまでも2番だったのだが。

のちに世界を変えたとまで言われ、唯一無二の存在になった男は、
誰よりナンバー1にこだわっていた。
絶対に2番なんかじゃダメだったのだ。

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阿部広太郎 13年9月22日放送



ナンバー2の男 土方歳三

新撰組の鬼の副長、土方歳三。
クセ者揃いの新撰組のまとめ方は、
嫌われ役に徹することだった。

隊からの命令、方針の決定は、
隊長近藤勇からではなく、
ナンバー2の土方が隊員に伝えた。

当然、怒りや憎しみを買う。
しかし土方はこの方法を全うした。

土方は、近藤勇にこう言ったという。

あんたは総師だ。
生身の人間だと思っては困る。
奢らず、乱れず、
天下の武士の鑑であってもらいたい。

新撰組への覚悟の強さは、
土方が一番だったのかもしれない。

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阿部広太郎 13年9月22日放送


ivva
ナンバー2の男 加藤正夫

タイトルを懸けた決勝戦で8連敗。
万年ナンバー2の囲碁棋士、加藤正夫は、
同門の石田芳夫九段に相談した。

加藤さんはすべての面でまじめすぎる。もっと遊びなさい。

それから加藤は数々のタイトル奪取に成功。
ついには名誉王座の称号まで手にする。

楽しむことで人は強くなれる。
加藤は誰よりも囲碁を楽しんだのだ。

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阿部広太郎 13年9月22日放送



ナンバー2の男 橋爪四郎

第二次世界大戦後、
水泳界で次々と世界記録を打ち立て、
「フジヤマのトビウオ」の異名を取った古橋広之進。
その裏には、橋爪四郎というもうひとりのトビウオがいた。

古橋と橋爪は水泳部の先輩後輩。
いつも一緒にレースに出場し、名勝負を演じた。
結果はいつも古橋がナンバー1、橋爪がナンバー2だった。

1948年の日本選手権、自由形決勝。
橋爪が先行していたが、ラストスパートで古橋が抜き去り、優勝。
世界新記録を出した古橋は「負けたくなかった」と語った。

2009年、橋爪は古橋の悲報に触れこう語った。

ヒロさんとともに競技できたことを誇りに思う。
お陰で何者にもまねのできない選手生活を送ることが出来た。

歴史に残る世界記録は、
ふたりで生み出していたのだ。

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佐藤理人 13年9月21日放送


DigiDreamGrafix.com
キングの道具箱①「誕生日」

 ドライバー1本で足りるのに
 なぜ道具箱を持ち歩くの?

少年は叔父に尋ねた。
ネジを閉めながら叔父は答えた。

 急に必要になったとき、
 手元にないと困るだろ?

少年は30年後、

 モダンホラーの帝王

と呼ばれるベストセラー作家になった。

「スタンドバイミー」「グリーンマイル」
「ショーシャンクの空に」など、
数々の名作で知られる彼の名は、
スティーブン・キング。

彼は著書「書くことについて」の中で、
物書きに必要な物もまた、

 自分専用の道具箱

だと言う。

今日で66歳になるキングだが、
その創作意欲は一向に衰えない。

きっと彼の道具は、
今もサビひとつなく
ピカピカに違いない。

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佐藤理人 13年9月21日放送



キングの道具箱②「受動態と副詞」

道具箱の一段目には、
普段最もよく使う物が入っている。

作家の場合、それは

 語彙と文法

だ。

基本的には手持ちのものを使えばいい。
言葉を無理に飾ろうとすれば、
却って恥をかくだけだ。

ただし、とスティーブン・キングは続ける。

 受動態と副詞は臆病者の好物である

言い回しが単純すぎはしないだろうか。
読者に分かりにくいのではないだろうか。

下手な文章の根底には、
大抵この手の不安がある。

しかし実際はどちらも文章を、
複雑で間延びさせるだけに終わる。

彼は言う。

 小説はテストやレポートじゃない。
 他人の目に自分の文章がどう映るか
 なんて気にするべきじゃない。

簡潔に、ありふれた物言いは避け、
自信をもって能動態で書き進めること。

後は読者が勝手に想像してくれる。
それこそ読書の醍醐味なのだから。

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佐藤理人 13年9月21日放送



キングの道具箱③「段落」

作家スティーブン・キングが考える
物書きの道具箱の二段目にあるもの。

それは、

 段落

だ。

多くの日本人は段落について
改行程度の認識しか持たない。

元々日本語には存在しない
文法なので無理もない。

しかし段落には明確なルールがある。

 一つの段落では一つの事柄だけを述べ、
 冒頭ではその要約を述べること。

キングは言う。

 その本が読みやすいかどうかは、
 中身を読まなくても分かる。
 一段落が短く、余白が多い。

しかし、その後でこう付け加える。

 言葉は無理に
 ネクタイを締めなくてもいいし、
 ドレスシューズを履かなくてもいい。

大事なことはルールよりリズム。
言葉の鼓動に耳を澄ませること。

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佐藤理人 13年9月21日放送


Darren W
キングの道具箱④「読むこと」

三流は一流になれないし、
一流が超一流になることもない。

しかし二流が一流になることはできる。

作家スティーブン・キングは言う。

 必要なことが2つある。
 たくさん読み、
 たくさん書くことだ。

彼が考える物書きの道具箱。
その最後の段には何もない。
あとは実践あるのみだ。

しかし書くためには、
読まなければならない。

 読書は作家の創作活動の中心にある。
 読む時間がないのに、
 どうして書く時間がとれるだろう。

キングが考える作家の最大の敵。
それは、

 テレビ

だ。彼曰く、

 テレビは時間をとりすぎる。
 テレビを切れば文章だけでなく、
 人生の質も上がる。

どうやらインターネットにも、
同じことが言えそうだ。

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佐藤理人 13年9月21日放送



キングの道具箱⑤「ドアを閉める」

傑作を書くのに、
雑誌に出てくるような
オシャレな部屋は必要ない。
高級な机も文房具もいらない。

必要な物はただ一つ。

 ドア

だ。

スティーブン・キングは言う。

 夢は寝室だけで見るものじゃない。

 作家にとって書斎は、
 八時間たっぷり
 創造的睡眠をとる場所だ。

そのためにはドアを閉め、
外のノイズをシャットアウトすること。

うるさくてはいい夢は見られない。
それは、白昼夢にも当てはまる。

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佐藤理人 13年9月21日放送



キングの道具箱⑥「ストーリー」

 物語とは地中に埋もれた化石
 のようなものだ

スティーブン・キングは言う。

 作家は道具箱を使って
 化石をできるだけ完全な形で
 掘り出さなければならない。

すべての物語には固有の形がある。
しかしどんな形をしているかは、
掘り出してみるまでわからない。

大切なのは形に逆らわないこと。
作家の仕事はストーリーに成長の場を与え、
それを文字にすることだ。

 私は主人公を窮地に立たせ、
 どう脱出するか見守っているだけだ。
 小説は単にその成り行きを、
 書き留めたものに過ぎない。

書いている本人にも結末はわからない。
予め筋書きを立てることにも
キングは懐疑的だ。

 そもそも人生に筋書きがあるかい?

仏師の円空は

 木に棲む仏像を取り出した

と言い、彫刻家ミケランジェロは

 石に囚われた天使を自由にした

と言った。

古今東西、創造とは即ち、
美の発見のことらしい。

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