おいしい料理をつくるひと
滋賀県の比良山(ひらさん)。
京都と若狭をむすぶこの山に、
「比良山荘(ひらさんそう)」という料理宿がある。
名物は「月鍋」。
雪と花の間の時期に食べることから、
雪月花の真ん中の月を取って名付けられたというこの鍋には、
比良山の猟師が仕留めた新鮮な熊の肉がたっぷりと入っている。
比良山荘の主人、伊藤剛治は
熊への思いをこう語る。
僕自身、熊の味がとてもすきで、
死ぬときになにを食べたいかいうたら、
やっぱり熊やと思うんです。
山の精霊である熊を、猟師が命がけで仕留め、伊藤が魂をこめて料理する。
熊も、猟師も、伊藤も、同じ山で生まれ育った仲間たち。
だからこそ、伊藤が作る月鍋には純粋な、山の恵みの滋味がある。