佐藤理人 13年10月20日放送
フェルマーの遺産「ワイルズ⑤ 登頂成功」
350年間、世界中の数学者の前にそびえ続けた、
数学史上最大の未踏峰「フェルマーの最終定理」。
イギリスの数学者アンドリュー・ワイルズは
頂上まであと一歩のところで遭難しかけていた。
ザイルを投げたのは、またも日本人だった。
1994年9月19日、月曜の朝。
天啓がワイルズを打った。
岩澤健吉の編み出した「岩澤理論」。
この代数的整数論を使えば
証明が完成することに気づいたのだ。
なぜ今まで気づかなかったのか不思議なほど
単純で優雅なとても美しい瞬間でした
翌朝、彼は証明をもう一度精査すると、
妻に「できたと思う」とだけ告げた。
350年間の謎がついに雪解けを迎えた。
数学者ヤコービは言った。
数学は人間精神の栄光のためにある
非難と恥辱に塗れた8年間。
ワイルズは努力と信念と勇気、
何より数学への愛でそのすべてを乗り越えた。
それは、まぎれもなく人間精神の勝利だった。