2014 年 1 月 5 日 のアーカイブ

大友美有紀 14年1月5日放送



「ぐりとぐら」1963年誕生。

だれもが1度は読んだことのある絵本、「ぐりとぐら」。
誕生したのは1963年、今年で51年目を迎える。
主人公の名前は
フランスの「プッフ・エ・ノワロ」という絵本から生まれた。
保母だった作者の中川李枝子は、保育園で
よくその絵本を読み聞かせていた。

 ノネズミたちがどんちゃん騒ぎをするのね。
 その歌があるんです。
 「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」って
 リフレインがつくの。

すると子どもたちは、待ってましたとばかりに
一緒になって「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」と言う。
「ぐりとぐら」は最初から子どものお気に入りだった。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


Lynda Giddens
「ぐりとぐら」たまご。

今年で出版51年目を迎える「ぐりとぐら」は、
はじめ「たまご」というお話だった。
当時、児童文学の新しい可能性を模索していた雑誌
「母の友」が中川李枝子に新作を依頼した。
出来上がってきたのが「たまご」。
森でみつけたとてもおおきなたまごで
カステラをつくる、お馴染みのあのお話。
編集者は、読み終えた瞬間、
頭の中に一冊の絵本ができあがったという。

 この物語にさし絵をつけて絵本にできる描き手は、
 妹の百合子さん以外考えられなかった。
 絵本など描いたことがないと躊躇する彼女を
 なんとか口説き落とした。

編集者は、その作者姉妹と「ぐりとぐら」は
日本の絵本界に一石を投じると紹介した。
そして51年間愛される絵本が出来上がった。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


blacque_jacques
「ぐりとぐら」オレンジ色の双子のネズミ。

絵本「ぐりとぐら」。
文は中川李枝子、絵は山脇百合子が描いている。
二人は5人兄弟の2番目と4番目の姉妹。
姉である李枝子は、子どものときから双子に憧れていた。

 妹や弟の面倒をみなくちゃならないし、母の手伝いはするし。
 だから双子なら二人お互い公平に、すべて公平で平等。

ぐりとぐらは、男の子の双子のノネズミ。
それまで、絵本など描いたことのなかった妹、百合子は
色付きのぐりとぐらををどう描けばいいか、困っていた。
すると、日本の動物画家の第一人者、薮内正幸から
上野の科学博物館の研究者を紹介される。
研究室の小さい引き出しにネズミの標本がずらっと入っていた。
端から順に開けて見ていったら、
オレンジ色の小さな綺麗なネズミがあった。

 ネズミがネズミ色じゃつまんないなと思っていたのね。
 というか、ネズミってネズミ色じゃないことがわかったわけ、そのとき。

 
李枝子の憧れと、百合子の好奇心が、
オレンジネズミの双子のぐりとぐらになり、
今年で51年目を迎える。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送



「ぐりとぐら」手ながうさぎ。

絵本「ぐりとぐら」には、多くの動物が登場する。
こぶた、ぞう、おおかみ、ねこ、白うさぎ。
そのなかでも、いっとう変わっているのは、くるりくら。
エイプリル・フールの日にぐうぜん出会った、
手ながうさぎ。

 待ちあぐねた春がやっと来ました。
 お日様の下に行って
 長い間寒さに ちぢこまっていた手や足を
 思いきりのばしたら・・
 手がどんどんのびて、
 力いっぱい「うーん」とのばした分だけ
 長くなったのです。

保母でもあり、母でもあった中川は。
冬、幼い子に朝晩着替えさせ、
お風呂、トイレ、外出の身支度と
一日中脱がせたり着せたり。
この着せ替え作業から解放されたい。
大人も子どもも身軽になりたい、
切実な願望から、くるりくらは生まれた。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


Giuliagas
「ぐりとぐら」すみれちゃん。

絵本「ぐりとぐら」が誕生してから今年で51年目。
シリーズで初めて登場した人間の女の子が、すみれちゃん。
大きなかぼちゃを、ぐりとぐらにとどける女の子。
すみれちゃんには、モデルがいる。
「ぐりとぐらとすみれちゃん」を書き上げる1年半前、
李枝子は盛岡での講演のあと、一通の手紙を渡される。
幼稚園の先生をしている、すみれちゃんのお父さんだった。
手紙の差出人は、すみれちゃんのお母さん。
脳腫瘍のため4歳で亡くなったすみれちゃんは、
生前、元気なときも病院のベッドでも、
「ぐりとぐら」の絵本をほんとうに楽しんでいた。
何も食べられなくなってからも
「ぐりとぐらのえんそく」のお弁当の場面を開いて、
『きょうはこれにする』と、食べる真似をしていた。

 すみれちゃんに、絵本の中で
 楽しい時間を過ごして欲しいと思って書いたのよ。
 すみれちゃんが、楽しいときを過ごしていることが
 お母さんとお父さんにとっても救いになると思うの。

物語の最後に、ぐりとぐらは、かぼちゃの種を埋める。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送



「ぐりとぐら」おりょうりすること たべること。

誕生51年目になる「ぐりとぐら」。
このよでいちばん すきなのは、
おりょうりすること、たべること。
登場する料理はみんなおいしそう。
あの有名な、フライパンでつくるカステラ。
おきゃくさまがつくってくれたクリスマスケーキ。
くるりくらの、にんじんのキッシュ。
すみれちゃんの、かぼちゃスフレケーキ。

 私たちの母は台所で溌剌としていました。
 戦後の食料事情が最悪のときも愚痴をこぼさず
 創意工夫できりぬけ、食卓を楽しく、
 家族を心身ともに満腹することに
 全力投球していたようです。

李枝子も百合子も料理とお弁当に情熱を傾ける。

けちじゃないよ ぐりとぐら
ごちそうするから まっていて

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


G O L D T O P
「ぐりとぐら」どっちが「ぐり」で、どっちが「ぐら」。

51年前「ぐりとぐら」の表紙の絵が仕上がった時、
そのタイトルは、黒い輪郭線だけの書き文字だった。
担当の編集者は、挿し絵担当の百合子に思わず聞いてしまった。

 「どっちがぐりで、どっちがぐら?」
 絵では一匹が青い服、もう一匹が赤い服を着ています。
 彼女は笑いながら、ぐりの文字を青色に、
 ぐらの文字を赤く彩色しました。

みなさん、これでもう覚えましたね。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


Strolling
「ぐりとぐら」ホットケーキ。

「ぐりとぐら」は今年で誕生51年目。
作者のひとり、中川李枝子は、「ぐりとぐら」について
語るように言われると、どうしも戻ってしまうエピソードがある。
それは、彼女が最初に働いた保育園の生活。
今とは違う、「青空保育」の時代。
男の子は放っておくと一日中外で遊んで保育園に戻って来ない。
なんとか保育園を「楽しいところ」にしなくてはいけない。
子どもたちは紙芝居が好き。それも16枚以上の長い紙芝居。
そこで、彼女は「ちびくろさんぼ」をうつし、24枚の紙芝居を作った。
子どもたちはひとり残らず、大興奮。
それが嬉しくなってこんどは、ホットケーキを焼いた。
子どもたちは、おいしいねぇー、先生は上手ねぇーと大よろこび。

 この、しあわせそのもの、
 といった子どもたちの姿に、
 私は自分でもおどろくほど、
 強い感動をおぼえました。
 一生消えないでしょう。

ホットケーキよりも、もっとおいしいものを、
ごちそうしようと思って、ぐりとぐらでは、カステラを焼いた。
だって、あっちのホットケーキには卵は入れてないから。

topへ


login