2014 年 1 月 のアーカイブ

佐藤理人 14年1月18日放送


Tilemahos Efthimiadis
フィリップ・スタルク①「ジューシー・サリフ」

 レモンしぼりだと思うなら、
 レモンをしぼるがよい。

1991年、糸井重里のキャッチコピーとともに、
その物体は西武百貨店のポスターに現れた。

巨大なレモンの種を逆さにしたような金属と、
そこから伸びた3本の長い脚。

ニューヨーク近代美術館における最高傑作であり、
プロダクトデザイナー、フィリップ・スタルクの名を
一躍有名にした

 ジューシー・サリフ

漫画に出てくる宇宙人のようなその姿は、
「機能とデザインの調和」などという言葉では
言い表せないほど驚きに満ちていた。

こんなレモン絞り器なら、
毎日でもレモンを絞って飲んでみたい。
そう思わせる力がその外見にはあった。

生活にデザインが合わせるのではなく、
デザインに合わせて生活が変わる。

それこそ、優れたデザインの力。

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佐藤理人 14年1月18日放送


kanga
フィリップ・スタルク②「フラムドール」

フランスが生んだ世界的デザイナー、
フィリップ・スタルク。

彼の建築デザインのキャリアは、
ここ日本で始まった。

浅草雷門から隅田川の方を見ると、
金色の不思議なオブジェが目に入る。

 フラムドール

別名、金の炎。
アサヒビールが本社ビルを建てるとき、
スタルクに依頼したものだ。

スーパードライホールの
屋上に設置されたそのオブジェは、
本当は炎らしく縦に立つはずだった。
しかし建築基準法にひっかかり、
やむなく横になってしまった。

見方によっては
犬のフンに見えなくもないその形。

炎がもしも予定通り縦だったら。
ここまでの人気スポットには
きっとなれなかった。

美しいだけでは、世界は平凡だ。

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佐藤理人 14年1月18日放送


kartellpeople
フィリップ・スタルク③「引退」

 私がデザインしたものは
 全て不必要だった。

そう言って6年前、
世界で最も愛されているデザイナーのひとり
フィリップ・スタルクは引退を宣言した。

自らを

 クリスマスプレゼント専門のデザイナー

と自嘲する彼にとってデザインとは
「人々への奉仕」だった。

デザインなんてなくても誰も困らない。
だからこそ彼は見た目だけでなく、
機能性や価格にこだわった。
そこには、

 趣味がいいだけの仕事をするな

という父親の教えがあった。

引退を決意した理由はわからない。
しかし65歳の誕生日を迎える今日も、
彼は精力的にデザインを続けている。

破られてうれしい約束もある。

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佐藤理人 14年1月18日放送


sifone
フィリップ・スタルク④「秘訣」

アイデアはどこから来るの?

デザイン界のユニーク王、
フィリップ・スタルクに聞いてみた。

 その方法はたったひとつ。独りでいることだ。
 誰もいない場所でまっ白な紙と向き合うこと。

インスピレーションの源なんてどこにもない。

彼は断言する。そして創造性を維持するには、

 早寝早起きをし、
 ヘルシーな食生活と適度な運動を心がけ、
 心身ともに健康でいること。

 流行から離れて僧侶のように暮らすこと。

が必要だ、と。

パーティのバカ騒ぎからは何も生まれない。
創造と幸福は両立しない、と言うのだ。

心の闇にこそ、本当の光は隠れている。
芸術とはリア充じゃない人々の
特権なのかもしれません。

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奥村広乃 14年1月12日放送


sifone
大人にならない少年

永遠に大人にならない少年、ピーターパン。
彼が、人間界の少女ウェンディと、
ネバーランドで繰り広げた冒険物語は
今も世界中の子どもたちを惹きつける。

ピーターパンの作者、
ジェームス・マシュー・バリーは
こんな言葉を残している。

 幸福の秘訣は、
 自分がやりたいことをするのではなく、
 自分がやるべきことを好きになることだ。

人はいつか成長し、大人になってしまう。
子どものままでいたかったと嘆くのではなく、
大人になった自分を好きになる。
それが、ジェームス・マシュー・バリーの考える
幸せの姿なのかもしれない。

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礒部建多 14年1月12日放送


epiclectic
大人の歌声

渋くも、
艶のある大人の歌声。
ボズ•スキャッグスのそれには、
男女問わず魅了する魔力がある。

楽曲は、クロスオーバー的で大人な旋律。
1976年に発表した「Silk Degrees」では、グラミー賞を獲得。
このアルバムがきっかけとなり、
AOR(adult oriented rock)という
新しいジャンルさえ生まれた。

以降、
TOTOやボビーコールドウェルなどの
AORの名アーティストが誕生するも、ボズは別格だった。
ブルースのようでいて、ソウルフル。
ボズの声を越えるAORアーティストは、
未だ現れていない。

来年には70歳を迎えるボズ。
年を重ねる度、その声は渋みを増し、新たな魅力を携える。
こんな大人に、なってみたい。

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澁江俊一 14年1月12日放送


e_haya
大人の目線

20年以上、一言もしゃべらずに
その表情や仕草だけで
日本中の子どもたちを虜にした大人がいる。

1934年生まれの俳優、
高見 映(たかみ えい)。
彼はその名前よりも、
181センチの長身から名づけられた
この役名のほうがよく知られている。

「のっぽさん」

1970年から1990年まで続いた
長寿番組「できるかな」の名物キャラクターだ。
その、のっぽさんが最も嫌いだったもの。
それは「子ども目線」に立つ大人。

子どもの賢さや鋭さは
幼稚なレベルだと決めつけて、
ほどほどの力で接しようとする。
そんな大人を彼は、大人の手抜きとして何よりも嫌っていた。
そしてどんな時でも、どんな子どもに対しても
ひとりの人間として本気で接した。

どうせわからないと思わず、全力で説明する。
怒ってほしい時は、しっかり怒る。

子ども目線という名の上から目線にならず
子どもをちゃんと大人扱いできる
のっぽさんのような大人が、増えますように。

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礒部建多 14年1月12日放送


Sarah.Marshall
大人の贅沢

レストランで生牡蠣の皿といっしょに
ダブルのシングル・モルトを注文し、
殻の中の牡蠣にとくとくと垂らし、そのまま口に運ぶ。

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」という本で、
村上春樹は、シングル・モルトの聖地アイラ島で
ラフロイグや、ボウモアなどの蒸溜所を訪れ、
出来たばかりのウィスキーを、
じっくりと堪能し、こう語る。

「うまい酒は、旅をしない」

出来るだけその産地で飲まないと、
そのお酒を成立せしめている何かが、失われていくということだ。

美味い酒を求めて、世界をめぐる。
そんな大人の贅沢な旅を、いつか味わってみたい。

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澁江俊一 14年1月12日放送


ShuttrKing|KT
プラスな大人

いくつもの肩書きを持つ男、伊丹十三。
あえて一言でくくるなら「最高の大人」だろうか。

子育てをしながら、
育児とは何か徹底的に考え抜いて
育児本を出版したり、

義理の父の葬儀の日に
映画監督になる決意をし、
お葬式という映画を撮ったり、

映画の大ヒットで、
しこたま持っていかれた税金が
マルサの女のストーリーになったり。

自分の人生から目を背けない、
明るく深みのある眼差し。

俳優、エッセイスト、イラストレーター・・・
いくつもの肩書きに
強風下におけるマッチの正しい使い方評論家
を追加しようとした。
このチャーミングさが、伊丹十三なのだ。

実は俳優になりたての頃の芸名は
伊丹一三(いちぞう)だった。
マイナスをプラスにするために
漢字の一を十にして、
十三と名乗るようになったのだ。

今日を
誰よりも真剣に、
おもしろがる。

伊丹十三のような大人が、
増えますように。

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奥村広乃 14年1月12日放送


Ame Otoko
大人の階段のぼったら

デジタルカメラはたしかに便利だ。
撮った写真をその場で見たり、
世界中に送ることができる。

でも、
写真をたくさん貼った
ずっしりと重みのあるアルバムがなくなるのは
すこし寂しい。

阿木燿子が作詞した
「想い出がいっぱい」には
こんな歌詞がある。

古いアルバムの中に 隠れて
想い出が いっぱい
無邪気な笑顔の 下の
日付は 遥かなメモリー

記憶はやがて薄れるが、
記録は残る。

人生を
振り返る年齢になった日の自分のために、
アルバムを一冊
つくってみてはいかがだろうか。

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