2014 年 1 月 のアーカイブ

松岡康 14年1月12日放送


ジョゼ
大人にならない少年

人はいつ、大人になるんだろう。

水分を多くふくんだ優しい水彩で、
生涯子供を描きつづけた画家いわさきちひろ。
彼女は大人について、こう語った。

大人というものは
どんなに苦労が多くても、
自分のほうから人を愛していける人間に
なることなんだと思います。

なるほど。
彼女の画は、愛に満ちている。
大人にしか描けない子供の画は、
いまも多くの大人のこころを惹きつけている。

topへ

松岡康 14年1月12日放送


Julizehn***
やなせたかし

約40年にわたり、
日本の子どもたちに
愛されつづけるアンパンマン。

自分の頭をもぎり、お腹の空いた子どもに食べさせる。
自らを犠牲にし、相手を幸せにしようとする。
初めてそれを見た大人たちの中には、
不快感をあらわにする者も少なくなかった。

この不思議なキャラクターを生んだのは、
作者やなせたかしの強い信念だった。

逆転しない正義とは献身と愛だ。
それも決して大げさなことではなく、
眼の前で餓死しそうな人がいるとすれば、
その人に一片のパンを与えること。

日中戦争に出征したやなせは、
飢えの恐怖を身をもって体験し、
献身こそ、ゆるぎない正義と知る。

戦争を知る大人として
やなせが送りつづけた、愛のメッセージ。
それが、今も子どもたちが大好きなアンパンマンなのだ。

topへ

道山智之 14年1月11日放送


a nameless yeast
ハル・デイヴィッド

作詞家ハル・デイヴィッド。
2011年度のガーシュウィン賞に輝き、
オバマ大統領から直接、賞を手渡された彼は
すでに90歳だった。
ともに受賞した作曲家、バート・バカラックとのコンビで
多くの曲を書いてきた。

これまでにポール・サイモン、スティーヴィー・ワンダー、ポール・マッカートニーが
受賞したこの賞を、ソングライティングチームが初めて受賞した。

「今までもらった賞の中でいちばんうれしい」と語った
ハル・デイヴィッド。
一度は疎遠になったバカラックと、
とびきりの笑顔で写真におさまっている。

topへ

道山智之 14年1月11日放送


@Doug88888
ハル・デイヴィッド2

作詞家ハル・デイヴィッド。
作曲家バート・バカラックとのコンビで初めてヒットを
飛ばしたのは37歳。遅咲きだった。

代表作のひとつ、
カーペンターズが歌った「Close to you」。

 どうして鳥たちは
 あなたが近づくと
 突然姿をみせるの
 そう みんなあなたのそばにいたい
 私がそうであるように

ハルは、この曲がヒットするとは思えなかったそうだ。

「つかみがないような気がしたんです。
 どんな曲がヒットするかなんて、誰にもわからない。
 だから私は自分が好きだと思うものを書けばいい、
 それをみんなも好きになってくれると思うようにしていました。」

topへ

道山智之 14年1月11日放送



ハル・デイヴィッド3

作詞家ハル・デイヴィッド。
いちばん好きな自分の作品は、「Alfie」だと語っている。

 やさしくするのが
 ばかげているというならば
 残酷でいることが
 賢いということになるのかな

この歌は、まず詩が先にできた。
それを相棒の作曲家バカラックに託してできたこの曲は、
通常では考えられないようなコード進行をみせる。

バカラックが語っている。
「歌詩が先にあるとき、
 自分ひとりで行く場所とはちがう場所にいけることがあります。
 メロディーは、歌詞によって、あの場所に行くことを命じられたんです」

topへ

道山智之 14年1月11日放送


ShuttrKing|KT
ハル・デイヴィッド4

作詞家ハル・デイヴィッド。
2年前、91歳でこの世を旅立った。

そのわずか9日後、
長年コンビを組んだ作曲家バート・バカラックは
日本でライブを行った。

バカラックは言った。
「このステージをハルにささげます」

当時84歳のバカラック。
ハルといっしょにつくった「雨にぬれても」をしゃがれ声で歌う彼は、
涙を見せなかった。

 雨のしずくがふりかかる
 だからといって
 泣きはらしたりなんかしない
 嘆くなんてぼくには似あわない

観客たちには、
「そのとおりだよ」と笑うハルの声がきこえたような気がした。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送



「ぐりとぐら」1963年誕生。

だれもが1度は読んだことのある絵本、「ぐりとぐら」。
誕生したのは1963年、今年で51年目を迎える。
主人公の名前は
フランスの「プッフ・エ・ノワロ」という絵本から生まれた。
保母だった作者の中川李枝子は、保育園で
よくその絵本を読み聞かせていた。

 ノネズミたちがどんちゃん騒ぎをするのね。
 その歌があるんです。
 「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」って
 リフレインがつくの。

すると子どもたちは、待ってましたとばかりに
一緒になって「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」と言う。
「ぐりとぐら」は最初から子どものお気に入りだった。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


Lynda Giddens
「ぐりとぐら」たまご。

今年で出版51年目を迎える「ぐりとぐら」は、
はじめ「たまご」というお話だった。
当時、児童文学の新しい可能性を模索していた雑誌
「母の友」が中川李枝子に新作を依頼した。
出来上がってきたのが「たまご」。
森でみつけたとてもおおきなたまごで
カステラをつくる、お馴染みのあのお話。
編集者は、読み終えた瞬間、
頭の中に一冊の絵本ができあがったという。

 この物語にさし絵をつけて絵本にできる描き手は、
 妹の百合子さん以外考えられなかった。
 絵本など描いたことがないと躊躇する彼女を
 なんとか口説き落とした。

編集者は、その作者姉妹と「ぐりとぐら」は
日本の絵本界に一石を投じると紹介した。
そして51年間愛される絵本が出来上がった。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送


blacque_jacques
「ぐりとぐら」オレンジ色の双子のネズミ。

絵本「ぐりとぐら」。
文は中川李枝子、絵は山脇百合子が描いている。
二人は5人兄弟の2番目と4番目の姉妹。
姉である李枝子は、子どものときから双子に憧れていた。

 妹や弟の面倒をみなくちゃならないし、母の手伝いはするし。
 だから双子なら二人お互い公平に、すべて公平で平等。

ぐりとぐらは、男の子の双子のノネズミ。
それまで、絵本など描いたことのなかった妹、百合子は
色付きのぐりとぐらををどう描けばいいか、困っていた。
すると、日本の動物画家の第一人者、薮内正幸から
上野の科学博物館の研究者を紹介される。
研究室の小さい引き出しにネズミの標本がずらっと入っていた。
端から順に開けて見ていったら、
オレンジ色の小さな綺麗なネズミがあった。

 ネズミがネズミ色じゃつまんないなと思っていたのね。
 というか、ネズミってネズミ色じゃないことがわかったわけ、そのとき。

 
李枝子の憧れと、百合子の好奇心が、
オレンジネズミの双子のぐりとぐらになり、
今年で51年目を迎える。

topへ

大友美有紀 14年1月5日放送



「ぐりとぐら」手ながうさぎ。

絵本「ぐりとぐら」には、多くの動物が登場する。
こぶた、ぞう、おおかみ、ねこ、白うさぎ。
そのなかでも、いっとう変わっているのは、くるりくら。
エイプリル・フールの日にぐうぜん出会った、
手ながうさぎ。

 待ちあぐねた春がやっと来ました。
 お日様の下に行って
 長い間寒さに ちぢこまっていた手や足を
 思いきりのばしたら・・
 手がどんどんのびて、
 力いっぱい「うーん」とのばした分だけ
 長くなったのです。

保母でもあり、母でもあった中川は。
冬、幼い子に朝晩着替えさせ、
お風呂、トイレ、外出の身支度と
一日中脱がせたり着せたり。
この着せ替え作業から解放されたい。
大人も子どもも身軽になりたい、
切実な願望から、くるりくらは生まれた。

topへ


login