佐藤理人 14年2月16日放送


Vanessa (EY)
Art meets Sweets ② プルーストのカフェオレ

紅茶に浸したひとかけらのマドレーヌ。
純白の生クリームを添えた深紅のいちご…。

20世紀初頭、ベルエポックの華やかな食生活を
詩的に描いた作家、マルセル・プルースト。
しかし彼自身は持病の喘息のため、
食が極めて細かった。
彼にとって食事とは貴重な楽しみであると同時に、
命を賭した生きるための行為だった。

この美味しさはもう二度と味わえないかもしれない。
プルーストはひと口ひと口を大切に脳裏に刻み、
美味なるフレーズに換えて文章の中に散りばめた。

そんな彼の唯一つの平穏。それはカフェオレ。

 朝のカフェオレの味は、
 我々に晴天への漠とした希望をもたらす

代表作「失われた時を求めて」でそう述べた彼は、
死の間際にはカフェオレしか口にしなかったという。

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