佐藤理人 14年2月16日放送
Moonik
Art meets Sweets ⑥ デュマのビスキュイ
「三銃士」の成功で巨万の富を築くと、
作家アレクサンドル・デュマはパリ郊外に大豪邸を建てた。
その名も「モンテクリスト城」。彼はそこで
夜な夜な大宴会を催し、美食と恋の限りを尽くした。
しかし晩年には浪費のツケが崇り、
一転、借金に追われる身となった。
戦争ですばらしい功績をあげるより、
おいしい料理を発明した方が、
どれほど人のためになり、名誉なことだろう
執筆や旅行、恋愛にさえ興味を失ったデュマが、
最後に得た人生哲学。それは「食べる喜び」。
遺作「料理大辞典」は、
デュマが世界中をまわって探し求めた
あらゆる食の知識を盛り込んだ傑作である。
彼が「スイーツ」の項の1ページ目に載せたのが、
サヴォワ風ビスキュイ
欲望のままに生き、甘い生活を味わいつくした文豪デュマ。
そんな彼が最後に愛したのは、最小限の味付けを施した
スポンジケーキの優しい甘さだった。