道山智之 14年4月26日放送
紀貫之④
平安時代の歌人、紀貫之。
65歳の頃書かれた「土佐日記」。
赴任していた土佐を離れるところから話ははじまる。
別れを惜しんで何日も船を追いかけてくる人たちを、彼はこう表現している。
この人々の深き志は、この海にも劣らざるべし。
しかし、55日もかけて
さまざまな困難の末たどりついた京都の家は、見る影もないほど
荒れ果てていた。
隣の人に管理をまかせて、欠かさず贈り物もしていたのに。
お付きの者たちが「ひどい」と怒り出すのを
主(あるじ)の老人は制して、お礼だけはすることに決める。
なにがあっても、心が凍りそうになっても、
自分らしいのびやかさを忘れない。
彼の作品にはいつも、貫之という人間が垣間見える。