澁江俊一 14年6月15日放送
作曲家のメモ
1953年に結成した「ビッグ・フォー」で、
アイドルさながらの
人気ピアニストとして活躍していた中村八大には
誰よりも苦しい時期があった。
初リサイタルの失敗、莫大な借金、
極度のスランプ、そして薬物への依存。
それでも助けてくれる友人がいた。
音楽家としての原点に帰るため
八大はアメリカとヨーロッパに渡り
現地で生の音楽を浴びるように聴いた。
そして1961年。
生まれ変わった八大は、
新たな一歩となる「上を向いて歩こう」を
初めて人々の前で演奏する。
中村八大22才のメモにはこんな言葉がある。
「中村八大は誰よりも苦しく、
誰よりも幸せでなければならない。」
世界中で愛された「上を向いて歩こう」は
若くして苦しみと幸せのすべてを
誰よりも味わった作曲家だからこそ、
生み出すことのできた歌なのだ。