藤本宗将 14年6月29日放送
A lover of dogs – 徳川綱吉
戌年生まれ。しかも戌の月、戌の日の生まれ。
まさに犬を愛する運命だったのだろう。
やがて彼は狆(ちん)を100匹も飼うほどの愛犬家になった。
さらに彼は野犬を保護するため
「犬屋敷」と呼ばれる巨大な犬小屋を建てた。
現在の中野区役所を中心に、その広さは30万坪にも及んだといわれる。
収容された犬は11万頭。犬10匹あたりの餌として
毎日白米3升、味噌500匁、干し鰯1升を与えさせた。
人々は彼のことを「犬公方」と呼んで揶揄した。
日本史上最も有名な愛犬家。徳川5代将軍・綱吉である。
彼が1685年に発布した「生類憐れみの令」は、
民衆を苦しめた悪法というのが定説。
しかし現在、綱吉の政治を再評価する向きもあるそうだ。
じつは「生類憐れみの令」が保護したのは犬だけではなく、
その対象は猫や鳥、魚類・貝類・虫類などの生き物、
さらには人間の幼児や老人にまで及んでいた。
戦国時代からまださほど時間の経っていない江戸時代初期。
命を軽視する暴力的な風潮が根強く残っていた当時、
「生類憐れみの令」の狙いとは
命を尊重する平和な世の中をつくることだったというのだ。
動物愛護。ペットの登録。捨て子の禁止。高齢者のための福祉サービス。
そういえば、いまではすべて当たりまえのことだ。
この愛犬家は、少しばかり生まれるのが早すぎたのかもしれない。