keyaki
発車のベル
月曜日の朝。
京急川崎駅のホームには、
東京方面に出勤するサラリーマンたちで
ごった返している。
上りの電車が入ってくる。
そこに、電車接近を知らせるメロディが重なる。
「上を向いて歩こう」。
川崎生まれの坂本にちなんで、
2008年から電車接近メロディに採用されたという。
その優しいメロディは、
憂鬱そうなサラリーマンたちの背中を少しだけ押す。
さあ、明日は月曜日。
出勤の前にすこしだけ、
このメロディを思い出してみては
どうだろうか。
keyaki
発車のベル
月曜日の朝。
京急川崎駅のホームには、
東京方面に出勤するサラリーマンたちで
ごった返している。
上りの電車が入ってくる。
そこに、電車接近を知らせるメロディが重なる。
「上を向いて歩こう」。
川崎生まれの坂本にちなんで、
2008年から電車接近メロディに採用されたという。
その優しいメロディは、
憂鬱そうなサラリーマンたちの背中を少しだけ押す。
さあ、明日は月曜日。
出勤の前にすこしだけ、
このメロディを思い出してみては
どうだろうか。
josemanuelerre
冒険のBGM
太平洋を単独横断。
大阪の青年、ヨットでシスコ湾着。
1962年8月12日、新聞にそんな記事が載った。
海洋冒険家、堀江謙一。
兵庫県西宮市を出港して94日目。
1万キロにおよぶ航海をへて、
彼の乗ったマーメイド号はサンフランシスコに着いた。
パスポートは持っていなかった。
密出国であり、密入国であった。
だが当時のサンフランシスコ市長は、
日本から来た青年を寛大な心で出迎え、
1か月の滞在を許可した。
日本人初の太平洋単独横断の様子は、
手記にまとめられ、
のちに映画化もされ大ヒットとなった。
そのタイトルは『太平洋ひとりぼっち』。
堀江氏は、海の上で心細かったとき
「上を向いて歩こう」をうたったという。
歌は人を勇気づける。
これからの冒険家は、
どんな歌を歌うのだろうか。
josemanuelerre
雨に想う① シェルブールの雨傘
カトリーヌ・ドヌーブがヒロインを演じた映画
『シェルブールの雨傘』。
彼女には将来を誓い合う恋人がいた。
しかし、戦争によってふたりは引き裂かれる。
ラストシーンで再会するふたり。
だが、胸の内を言葉にすることができない。
互いに別の人生を歩み始め、家庭もあった。
別れ際、カトリーヌ・ドヌーヴは
かつての恋人にこう問いかけ、静かに立ち去る。
あなたは、幸せ?
そのひと言にどれほど多くの感情が込められているか。
世界中の女性が思いを巡らせ、涙を流した。
『シェルブールの雨傘』。
オープニングで降り始める雨は、
ラストシーンでは雪に変わる。
steve lorillere
雨に想う② レ・ミゼラブル
1985年にロンドンで上演されて以来、
世界中で愛され続けるミュージカル『レ・ミゼラブル』。
劇中、叶わぬ恋が描かれる場面がある。
市民革命のさなか、
少女エポニーヌは
ひそかに想いを寄せていた青年マリウスをかばい、
銃弾に倒れる。
静かに雨が降る中、
死の淵で彼女はこう歌う。
あなたを連れてきてくれたこの雨は、天の恵みだわ。
エポニーヌは始めからわかっていた。
これが叶わぬ恋であることを。
それでも彼女はやすらかに目を閉じる。
マリウスの腕に、初めて包まれながら。
少女の頬をつたうしずくは、涙か、雨か。
hidden side
雨に想う③ 川端康成
川端康成の「掌の小説」のなかに
『雨傘』という一編がある。
父親の転任のため離ればなれになる少年と少女。
雨の中ふたりは写真館へ行き、別れの写真を撮る。
要約すれば、それだけの話である。しかし、
写真屋を出ようとして、少年は雨傘を捜した。
ふと見ると、先きに出た少女がその傘を持って、
表に立っていた。少年に見られてはじめて、
少女は自分が少年の傘を持って出たことに気がついた。
そして少女は驚いた。なにごころないしぐさのうちに、
彼女が彼のものだと感じていることを現わしたではないか。
ふたりの距離が縮まったことを物語る一本の傘。
川端康成は男女の機微をおそろしいほど見事に描く。
雨に想う④ 宮沢賢治
宮沢賢治に「永訣の朝」という詩がある。
最愛の妹との別れをうたった詩だ。
病の床に伏す妹。
外はみぞれまじりの雨が降っている。
激しい熱と喉の渇きに、妹は賢治に
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」、
「雨と雪をとってきてほしい」とせがむ。
ああとし子
死ぬといういまごろになって
わたくしをいっしょうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
死にゆく者を前にして、人は無力である。
賢治は妹の頼みを兄に対するやさしさと受け取った。
あめゆじゅとてちてけんじゃ
「永訣の朝」の中で繰り返されるこの言葉。
その響きはあまりに哀しく、あたたかい。
M6 Panda
家の話 いしいしんじの町家
幻想的な味わいの作品を発表する作家、
いしいしんじ。
数年前から、京都の
古い町家に住んでいる。
彼にとって家は仕事場。
書いているとふとこう思うという。
家というよりも、「不思議なトンネル」
の中いるような感覚になる。
家の中でも、遠くにいける。
それは、町家の魔法かもしれない。
Kemon01
家の話 ドリス・デュークのシャングリラ
ドリス・デューク。
1925年、12歳のときに父を亡くし、
膨大な遺産で、世界一裕福な女の子といわれた。
彼女の伝記にこんな一節がある。
日記を書くように、ドリスは家を建てた。
世界中に6つの家をたて、
自家用ジェットで世界中を飛び回った。
そんな彼女が一番手をかけた家がハワイにある。
イスラム美術を集め、50年かけて内装をしあげていった。
カハラ地区にある、その邸宅はシャングリラと呼ばれる。
2度の離婚に、子どもの死。
最後まで、家族をもたなかったドリスにとって、
家とは、生活の場ではなく、
夢を見る場所だったのかもしれない。
家のはなし 坂口恭平の家
図面も引けなければ、ろくな家を建てたこともない。
建築家、坂口恭平。
早稲田大学理工学部で建築家を志し、勉強に励む一方で
土地を買って所有し、莫大な金額を払って家を建てる
という日本の建築システムに疑問を感じていた。
そんな折、隅田川の河川敷で
鈴木さんという路上生活者との出会いを果たす。
鈴木さんの家をのぞかせてもらうと
ざっと3畳はありそうな部屋に
車のバッテリーを改造して電気を通し、
拾ってきた冷蔵庫や洗濯機を動かしている。
そこには大都会、東京の中で、確かに自分の手で建てた家が存在していた。
坂口は言う。
エコノミクスの語源は、「住まい」という意味の「オイコス」
と「あり方」という意味の「ノモス」である。
つまり、僕たちは経済をどうしていくか考えるときには必ず
家とはなにかを考えなくてはならない。
現代社会で考える、効率的な家とは何か。
坂口が考えたのは、予算3万円の移動できる家、モバイルハウス。
家づくりの常識を変えた男はいま、
生き方の常識も同時に変えようとしている。
ミルちょ
家のはなし 隈研吾の家
世界的な建築家、隈研吾のデビュー作は
伊豆の別荘だった。
太平洋が見渡せるすばらしいロケーションにありながら
竹とトタン板を組み合わせた外観に、段ボールでつくった茶室。
工業的なものを使うことで、別荘特有のメルヘンなイメージを変えた。
哲学のない建築は人の心を動かさない。
僕は図面を書くときは、
手紙だと思って書けと言ってるんです。
彼からの、家のかたちをしたメッセージに、
世界はこれからも、何度となく驚かされるのだろう。
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