2014 年 6 月 のアーカイブ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-02
Ahef
ある偉大な発見 レントゲン

20世紀を目前にしたドイツ。
ビュルツブルグ大学の物理学教授は、
陰極線の研究に没頭していた。
陰極線とは、高電圧によって生じる電子の流れのこと。
しかしその当時は、空気を輝かせるがすぐに消えてしまう、
謎の現象と考えられていた。

ある晩、教授が放電管に電圧をかけると、
作業台に載っていたボール紙が光りはじめる。
この放射線に、未知数を意味する「X」と名付けた。

教授の名は、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン。
もちろん、レントゲンの生みの親である。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-03
oakridgelabnews
ある偉大な発見 撥水剤

アメリカの化学者、パッツィ・シャーマンは、
1950年当時では珍しい女性の研究者で、
劣化しにくい合成ゴムの開発に取り組んでいた。

ある日、実験室の助手が、
フルオロケミカルとラテックスの乳剤が入ったフラスコを
床に落としてしまう。
液体は四方八方に飛び散り、スタッフ全員で掃除をする羽目になった。

ところが、助手のスニーカーにかかった部分がどうしても落ちない。
水の中でこすっても、落ちるどころか水をはじいてしまう。

どんな溶剤も浸透させず、
ありとあらゆる液体をはじき、
泥にすら耐性がある。

彼女たちが、合成ゴムの開発よりも、
この偶然の産物に夢中になったことは言うまでもない。

のちにパッツィは言った。
「予期していない出来事をチャンスとして見逃さない能力は、
 誰かに教わるものではありません」

失敗作に目を向ける勇気と好奇心で、
年商3億ドルというヒット商品、
水をはじく撥水剤「スコッチガード」が生まれた。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-04
quinn.anya
ある偉大な発見 瞬間接着剤

1942年。
アメリカの化学者、ハリー・クーヴァーは、
偶然、シアノアクリレートという物質を発見する。
この化合物の特徴は、分子同士が簡単に結合すること。
つまり、なんでもくっつけてしまうものだった。

それから10年後、
ハリーは、またもやシアノアクリレートと出会う。
ようやく本腰を入れて実験を始め、
誕生したのが、瞬間接着剤だった。

偶然も二度続けば、運命になる。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-05
Charlie Carver
ある偉大な発見 ケブラー

1960年代。
アメリカの化学者、ステファニー・クウォレックは
ノーメックス繊維の開発に従事していた。
この繊維は、当時、消防士の防護服や
電気の絶縁体にも使われており、
構成する分子さえ同じであれば
さらに強度を持つ繊維が作れるのではないかと彼女は考えていた。

合成繊維とは、分子レベルで結合させて
一度液体にしなければ先に進めない。
試しに溶媒と混ぜて液化してみると、
見たこともないような白く濁った液体になった。
それを繊維に変え、物理的性質を測定した結果、
彼女がつくった一番硬度の高い繊維よりも9倍の硬さを持っていた。
そして強度は、同じ重さの鋼鉄の5倍。
彼女は、偶然のチャンスをものにした。

「ケブラー」という名前で知られるこの繊維は、
宇宙服、飛行機のブレーキパッド、防弾チョッキにも応用された。
ちなみにケブラーは、紫外線や水に弱い。
そのため防弾チョッキは、光や水から繊維を守る作りになっている。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-06
John Flinchbaugh
ある偉大な発見 電子レンジ

マグネトロンとは真空管の一種で、
強力なマイクロ波を発生する。
第二次世界大戦では、レーダー技術にも応用された。

そのころ、とある研究所の責任者、パーシー・スペンサーは
空腹のため、板チョコを持ちながら実験室を歩き回っていた。
すると、チョコレートが溶けていることに気付く。
トウモロコシは、はじけてポップコーンになり
卵は小刻みに揺れて、破裂した。
マイクロ波による加熱効果である。

電子レンジをつくったのは、一枚の板チョコだった。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-07

ある偉大な発見 ゴムの加硫処理

1800年初頭まで、
ゴムは、寒いと崩れ、暑いと溶ける物質だった。

アメリカの発明家、チャールズ・グッドイヤーは
ゴムにさまざまな材料を混ぜて実験を繰り返す。
あるとき、硫黄を練り合わせたゴムをストーブに落としたところ、
ゴムは溶けるどころか硬くなっていった。

偉大な発見の多くは、小さな偶然から生まれる。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140531-04

ある偉大な発見 ガラス

専門家に言わせると、ガラスとは
「液体のような性質を持った固体のようなもの」だそうだ。
その材料は、砂の中に存在する二酸化ケイ素。

およそ1700℃にならないと溶けない二酸化ケイ素が
どのようにして、紀元前3000年のヨーロッパで生まれたか。
それは、ある偉大なフェニキア人に聞いてみないとわからないが、
おそらく偶然と、幸運と、探究心が見守ってくれたのだろう。

topへ

佐藤延夫 14年6月1日放送

140601-08

ある偉大な発見 テフロン

アメリカの化学者、ロイ・プランケットは、
冷蔵庫などに使われるフロンガスの冷媒について研究をしていた。

1938年のある日、
気体にしたテトラフルオロエチレンをボンベに充填し、
ドライアイスで冷やしたまま家路につく。
しかし翌日、ボンベからガスが消えていた。
残されたのは、白いフレーク上の固体のみ。
調べてみると、さまざまな特性がわかった。

つるつると滑りやすい。
酸や油、アルカリといった溶媒に対する耐性が強い。
260℃以上に熱しても特性を失わない。

この物質は、テフロンという名前になり、
暮らしを便利に変えていった。

topへ


login