三國菜恵 14年8月31日放送
よっちん
あの人の夏 大林宣彦
日本はこの夏、終戦69年をむかえた。
戦争を知らない子どもたちは69歳になった。
映画監督・大林宣彦は今年76歳。
7歳のとき、終戦を経験した。
そのときの空気を彼はこう振り返る。
生者と死者の区別があまりなくて、
亡くなった人がすぐそばにいる感覚で育った。
学校の行き帰りではお墓が遊び場だったし、
ひいじいちゃん、ひいばあちゃんの遺影が置かれた座敷に入ると
2人が話しかけてくる気がした。
戦地に赴いたおじちゃんがお骨になって帰ってきたときには、
セミがうるさく鳴く中、にいさんが僕の頭をやさしくたたいた。
子ども心にその空気は、絶対に忘れてはならないと思った。
だから大林はいまも映画を撮るという。
正義を語るためではなく、
人間が正気でいられるようにと祈って。