道山智之 14年9月20日放送

140920-04
Luke.Larry
荒城の月④ ~土井晩翠 

詩人・土井晩翠。
彼が書いた詩「荒城の月」に曲をつけたのは、
8歳下の作曲家、瀧廉太郎。
曲は公募で集められたため、曲づくりのために会うことはなかった。

彼らが出会ったのは1度だけ。
曲ができてから1年後の1902年、晩翠がヨーロッパに遊学中のことだった。
ドイツのライプツィヒ音楽院で学びはじめた廉太郎は、
わずか2カ月で結核を得て帰国の途についた。
その船がロンドン郊外ティルベリーの港に寄ったとき、
晩翠は廉太郎を見舞ったのだ。

最初で最後の対面。
ふたりはどんな言葉をかわしたのだろうか。
おたがいの仕事を、たたえあったのか。
テムズ川に月は映っていただろうか。

それから40年後、この曲を聞いて音楽家を志したのは、
まだ10歳だった中村八大。
その後「上を向いて歩こう」などの名曲を書いて
戦後の日本を勇気づけることになる。

何度会えたか、会えなかったか、にかかわらず、
想いは時をこえて共感され、かたちになっていく。
そんな地上の営みを、月はしずかに照らしている。

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