2014 年 9 月 28 日 のアーカイブ

小野麻利江 14年9月28日放送

140928-01
yomi955
日本の「食」 味噌・醤油と禅宗

鎌倉時代、曹洞宗の祖・道元は
料理をどう食べるべきかという心得を
こう説いている。

 食とは道、つまり仏法と同じ。

いまや和食に欠かせない調味料・味噌と醤油が
この時代に禅宗を学んだ僧によってもたらされたのも、
「肉食を避けながら、肉に限りなく近い味を
調味料で工夫して食べる」という
食を通じた、禅の修行のためであった。

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熊埜御堂由香 14年9月28日放送

140928-02

日本の「食」 小林カツ代の和の洋食

日本の家庭料理の第一人者、料理研究家の小林カツ代。
20代後半から仕事に追われながら、
年子2人の子育てに奔走した。

そんな彼女が忙しすぎて心が荒んだ時、夕食につくるのが
「やさしい気持ちになるコロッケ」。

つぶしたじゃがいもを手の上でコロコロするうちに
落ちついた気持ちになれたという。
秘密の隠し味は「練乳」。
こっそり入れると、ほっこり甘くなる。

子どもたちが大好きな和の洋食。
家族をつなぐ、そんなレシピが、
きっと、どこのうちにもある。

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小野麻利江 14年9月28日放送

140928-03
Coolcaesar
日本の「食」 シリコンバレーの寿司職人

寿司職人の、佐久間俊雄。
アメリカ・カリフォルニアのシリコンバレーで、寿司を握ってきた。

そんな佐久間の店に、たびたび顔を出す男がいた。
スティーブ・ジョブズ。
菜食主義で、はじめは巻物ばかり注文していたというが、
じょじょに生魚のネタを頼むようになり、
そしてある日。唐突に佐久間に、

 穴子はあるか?

と尋ねてきた。
日本から冷凍して運んできた穴子を
佐久間が握って出すが、なかなか手をつけない。
その様子を見て、佐久間は、
(本物の穴子を出すから、ちょっと待っていてくれ)
という気持ちになったという。

ジョブズの次の来店にあわせ、
生け締めにした新鮮な穴子を日本から取り寄せ、出したところ、
普段あまり料理の感想を言わないジョブズから、

 It’s good!

という褒め言葉が飛び出したという。

部下だけでなく、寿司職人も奮起させていた
スティーブ・ジョブズ。
佐久間がそんな手強い客を相手にしていた26年ほどの間に、
シリコンバレーの和食も、イノベーションを遂げていった。

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熊埜御堂由香 14年9月28日放送

140928-04
U.S. Army Garrison Japan
日本の「食」 ラーメンという食文化

 ラーメンを売るな。食文化を売れ。

日清食品の創業者、安藤百福。
世界初のインスタントラーメンを手に、
社員に檄を飛ばした。

それから、56年、
日本のラーメンは、世界も認める
立派な日本食に成長した。

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茂木彩海 14年9月28日放送

140928-05
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日本の「食」 小野二郎の手

東京、銀座にただずむ1件の鮨屋、「すきやばし二郎」。
世界中の食通が、このちいさな店に足を運ぶ。

主人の名は、小野二郎。

89歳になった今も変わらず、鮨を握り続け、
7年連続でミシュラン3つ星を獲得。
世界最高の鮨職人と評価されている。

 頂上にいけば完璧かもしれないけれど、
 その頂上はどこかと言うと、まだわからない。

この年になっても、自分が完璧な職人だとは思っていない。
ひたむきに技を磨くその様子は
2011年にはアメリカでドキュメンタリー映画となり、異例のヒットを納めた。

彼が鮨を握る上で大切にしていることのひとつが、「手」。
手で握る、にぎり寿司だからこそ、手そのものは仕事道具。
シミができないように、外出する時は常に手袋をするという徹底ぶりだ。

彼は言う。

 そのときすしをにぎるわたしがジジイくさかったら、
 すしが美味しく見えないでしょ。

日本一美味しい寿司は、
日本一寿司を愛する人の手からしか、生まれてこない。

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茂木彩海 14年9月28日放送

140928-06
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日本の「食」 世界で唯一の味

2013年、「和食」が無形文化遺産に登録された。

この立役者となったのが、
京都の料亭「菊乃井」の3代目主人、村田吉弘。

NPO法人日本料理アカデミーを設立し、「和食」文化の保護活動を行ってきた。

世界の料理は、みんな脂質が中心だが、
唯一、日本だけはうまみ成分が中心。

その不思議な調理法は日本に暮らし、
日本のものを食べてきた者でなければ決して身に付かないという。

 米と水が中心にある食文化をもっぺん全国民に知ってもらわないかん。

彼はいま、和食を通して
日本という国をもういちど、豊かにしようとしている。

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薄景子 14年9月28日放送

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日本の「食」 道場六三郎

料理人、道場六三郎。
和食でありながら
西洋料理や中華の食材を取り入れ
日本の料理人ブームの先駆けとなる。

80歳を超えても伝統と新しい味に
挑戦しつづける道場はこう言い切る。

 素材に国境はない。

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薄景子 14年9月28日放送

140928-08

日本の「食」 西健一郎・西音松

現代を代表する日本料理人、西健一郎。
その父は伝説の京料理人、西音松。

若い頃は父親のもとで働くこともなく、
言葉を交わしたことさえ、ほとんどなかったという。
その健一郎が、父に教えを請うたのは
自分の店が各界の著名人が集う人気店になってから。

このままでは先に進めない。そう自覚した健一郎は、
引退していた父に土下座をして頼みこみ、
86歳で父が亡くなるまで、10年以上修業し続けた。

口数の少ない父親の作業をじっと見て、
その料理哲学を学びとる日々。
父、音松はよく独りごとのように
核心をつく言葉を言ったという。

 「これでいいちゅうのはひとつもない。それを言うのは死ぬ時や」

あまたの食通をうならせる健一郎の料理には、
一生学びをやめない料理人魂が生きている。

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