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「動物園の人々」京都大学霊長類研究所・松沢哲朗(まつざわてつろう)
チンパンジーの運動場にそびえ立つタワー。
こういった構造物をつくることは、
日本の最近の動物園の傾向だ。
きっけは、京都大学霊長類研究所。
1978年からチンパンジーの知性研究「アイ・プロジェクト」に
携わる松沢哲朗は、野生のチンパンジーの生態研究も行っていた。
野性では、彼らは1日の半分以上を樹の上で暮らす。
チンパンジーがチンパンジーらしく暮らせるよう、
「太陽があり、土があり、緑があり、仲間がいる暮らし」を
目指して、高さ15mのタワーをつくった。
内部には、高低差を利用した還流式の小川、
大小さまざまな木々が生育している。
心配していた落下事故や脱走もなかった。
タワーを導入した動物園のチンパンジーたちは
喜んで使っているようだ。
松沢はチンパンジーの研究を通じて、人間の心や進化的起源を探り、
「比較認知科学」という新しい研究領域を開拓した。