道山智之 14年11月8日放送
チャイコフスキー 4
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー。
幻の交響曲「人生」。
未完成のまま終わったが、
そのテーマが引きつがれてできたといわれる曲がある。
交響曲第6番「悲愴」。
このタイトルはフランス語では“Simphonie Pathétique”、
たしかに「悲愴」と訳されるが、
元々チャイコフスキーが自筆の楽譜に書きこんだのは
ロシア語“патетическая(パテティチェスカヤ)”。
「情熱的」「心を動かす」という意味だった。
「この曲は、私の作品の中で、もっとも心のこもった曲だ」
初演されたわずか9日後に、彼はこの世から旅立ったために、
「悲愴」というタイトルは謎めいた響きを持つことになった。
しかし彼は、けして遺言がわりにこの曲を書いたのではなく、
これからもいい仕事をする気満々だったのではないだろうか。
ちょうどこの頃、とある劇場からの指揮の仕事も引き受けたばかりだったという。
“チャイコフスキー 交響曲第6番「情熱」”
タイトルを心の中で置きかえて、
そっと目をとじ聴いてみる。
彼の想う「人生」を感じてみる。