大友美有紀 15年1月4日放送
「母の言葉」前島密(まえじまひそか)
前島密は、越後国の生まれ。幼名を房五郎という。
幼い時に父を亡くし、医者である叔父の世話になっていた。
叔父の家では、医書に接し、薬剤の調合や患者の扱いなどを
見よう見まねで覚えた。漢詩や俳諧も学んだ。
ある時、夕暮れの枯れ木にカラスがとまっているのを見て、
寂寞の趣を感じ、句を詠んだ。
夕鴉(ゆうがらす) しょんぼりとまる 冬木立
俳句の席でこれを披露すると大いにほめられ、
賞品ももらった。
帰宅すると母は居住まいを正して語った。
幼くして書を理解しほめられている者も、
成長するにつけ凡庸となり笑われてしまうこともあります。
今日のことも、同じように、あなたの心に自負を生じさせ
いつか過ちを起こすのではないかと心配です。
この言葉を前島は、生涯の訓戒にしたという。