蛭田瑞穂 15年1月11日放送
片思い⑦ロラン・バルト
フランスの思想家ロラン・バルトは
恋愛に関する著書でこんな故事を紹介している。
昔、中国のある高官が歌姫に恋をした。
「わたしの部屋の窓の下で、百夜お待ちくだされば、
あなたのものになりましょう」、女はそう言った。
男はそのとおりに待ち続けた。そして九十九日目の夜、
男は立ち上がり、静かにその場を立ち去った。
男はなぜ待つことをやめたのか。
もちろん、それは誰にもわからない。
どんな思想家にも解明のできない難問が恋愛なのだ。