2015 年 1 月 25 日 のアーカイブ

薄景子 15年1月25日放送

150125-01
bhollar
はじまりのはなし ジュール・ルナール

フランスの作家、ジュール・ルナールは言った。

 毎朝、目を覚ますたびに
 お前はこう言ってもいいだろう。
 体が動く。気分も悪くない。
 ありがたい。人生は美しい。

1日のはじまりに、
きょう目覚められたことに感謝する。
ただそれだけで、
その1日が、かげかえのないものになる。

「目覚め」は、きょうも生きている
という奇跡なのだ。

さあ、あなたも
素晴らしい1日のはじまりを。

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薄景子 15年1月25日放送

150125-02
andrewmalone
はじまりのはなし 辻井伸行

全盲の天才ピアニスト、辻井伸行。
その才能に母親が気づいたのは、彼が2歳のとき。
夕食をつくりながら母が口ずさんでいた歌を
2歳の辻井はおもちゃのピアノで奏でてみせた。

やがて才能をどんどん開花させ、様々なピアノコンクールで優勝。
2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールでは、
日本人史上初優勝という快挙を果たす。

ここまで美しいメロディーを、なぜ奏でられるのか、
辻井はあるインタビューでこう答えたという。

 がんばってくださいとピアノに言って気持ちを込めると
 すごく美しい音がでます。

曲のはじまりにこめるピアノへの想い、
その感性の美しさこそが、天才の原点。

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熊埜御堂由香 15年1月25日放送

150125-03
Bakkai
はじまりのはなし 南木佳士と川

 長男が生まれたころ、私は死のことばかり考えていた。

芥川賞作家、南木佳士(なぎけいし)。
当時、研修医として大学病院に勤務していた。

生まれて数カ月の長男をお風呂に入れていると、
病院からの呼び出しがかかり、患者のもとへ駆けつける。
人間の出発と臨終を交互に見せつけられる
生活をおくるうちに、心が凍りついてしまった。
これ以上、病院にいられないと思い詰めていたとき、
ふと、裏手にある川の岸に出てみようと思った。
川に目をこらすと、水中を泳ぐアユの群れやハヤの子が見えてきた。
この川の先にある、自然淘汰の厳しさにもかまわず、
精一杯、前に前にと泳いでいた。
小さな命を眺めているうちに、病院に戻ろうという気力が戻ってきた。

そのころから、南木は小説をかきはじめる。
そして、ひとの死を看取ることを専門とする「緩和医療」の道へ進んだ。
「生と死を見つめる」。
おなじ出発点から、彼は、小説家として、医師として
歩き続けた。

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熊埜御堂由香 15年1月25日放送

150125-04

はじまりのはなし 江國香織と絵本

小説家、江國香織。
今では恋愛小説の名手ともいわれる彼女だが、
童話作家として、キャリアをスタートした。
彼女のルーツともいえる本を紹介した1冊、

 絵本を抱えて 部屋のすみへ

そのタイトルからは、小さなころから
本の虫だった江國さんの
かわいらしい姿が浮かんでくる。

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茂木彩海 15年1月25日放送

150125-05
coloneljohnbritt
はじまりのはなし メアリー・ケイ・アッシュ

1年のはじまり。1月。

今年の目標は?と聞かれたり、聞いたりして
考える機会は多いけれど、
実行に移せないこともあるのが、正直なところ。

アメリカで化粧品メーカー、メアリー・ケイを創立し、
わずか9人でスタートした企業を85万人が働く大企業へと成長させた
女性企業家、メアリー・ケイ・アッシュは言う。

 航空力学的にはマルハナバチは
 飛べるはずがないけれど、
 マルハナバチは
 航空力学なんて知らないから、
 とりあえず飛び続けているのよ

このハチは、2センチほどのまるまる太った体に
ふわふわした毛が生えていて、その羽根は小さく、
航空力学的にみると飛ぶのはまるで不可能と言われてきた。

ところが、自分が飛べないことを知らないから、
堂々と飛べるのだ、というのがメアリーの見解。

できないと思うより手前で、飛び込んでしまう。

なにかをはじめる時にはそれくらい無鉄砲なほうが
強いのかもしれない。

1年のはじまり。1月。
さぁ、なにをはじめよう。

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茂木彩海 15年1月25日放送

150125-06

はじまりのはなし 柴田元幸

アメリカ文学の研究者、柴田元幸は
書き出しだけをあつめ、自ら新訳を行った世界文学全集の中で、
あの有名な物語のはじまりを、こう訳した。

 私は猫だ。いまのところ名前はまだない。

ひとことで、世界が決まっていく。

だからこそ、物語のはじまりに
作家の力は注がれる。

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小野麻利江 15年1月25日放送

150125-07

はじまりのはなし キケロにとっての「はじまり」

新しい1年が、また始まった。

先行き不透明な、今日このごろ。
目標は心の中にあるけど、
カタチにできる自信が無い・・・
そう尻込みする人たちに、

古代ローマの哲学者、
キケロの言葉を贈りたい。

 始まりは、どんなものでも小さい。

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小野麻利江 15年1月25日放送

150125-08
armycat
はじまりのはなし 野矢茂樹の「はじめて考えるときのように」

あなたが生まれてはじめて
「考える」という行為をした時、
頭の中には、どんな景色が浮かんでいただろう。
目の前の世界は、どのように映っていただろう。

哲学者の野矢茂樹の著書に、
『はじめて考えるときのように』という本がある。
副題は「『わかる』ための哲学的道案内」。
それは、考えるということについて、考える本。

中学生くらいの子どもに寄り添うような
優しいまなざしでつづられた文章の中で語られるのは、
私たちの考えが日頃、いかに多くの「当たり前」や
「見えない枠」にしばられているかということ。

そして、ヒト・モノ・コト、出会ったすべてを
頭につめこんで、ゆさぶったのち、空っぽにする。
そのくり返しこそが、「考える」ことではないかと
野矢は言う。

本当に「考える」ということ。
それはきっと、はじめて考えるときのように、考えること。

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