Mullenkedheim
凍る涙
禁断の恋。
許されぬ逢引。
そして、駆け落ち。
伊勢物語に書かれた、
男が二条の后を盗み出すエピソード。
モデルは、平安時代を代表する歌人、在原業平。
そして、藤原高子(ふじわらのたかいこ)といわれている。
高子は才色兼備な女性で、
彼女の舞をみた男性は、
あまりの美しさに熱を出したという。
しかし、藤原一族の政略結婚に巻きこまれ
愛する人と結ばれることはなかった。
高子は、こんな歌をのこしている。
雪のうちに春はきにけり 鶯のこほれる涙いまやとくらむ
雪がすべてを閉じ込めているうちに春が来た。
鶯の涙は、かなしみで凍っているけれど、
あたたかい春が来たのだから、
これから溶けてゆくのでしょうか。
辛い冬を越えて、春が来るように。
恋のかなしみも、いつか終わる。
平安の悲恋の姫君も、そう願ったのであろうか。