小林慎一 15年2月21日放送
sabamiso
有名な無名猫
名前はまだつけてくれないが、
欲をいっても際限がないから
生涯この教師の家で
無名の猫で終わる積もりだ。
人間の強欲さに半ば呆れていた
「我輩は猫である」の猫の言葉である。
慎ましく達観した姿勢が人間と対照的である。
実際に夏目漱石も猫を飼っていた。
しかも、名前をつけずに、ただ、「猫」と呼んでいた。
しかし、その猫が死んだ時、
漱石は、知人たちに丁寧な死亡通知を出した。
葬の儀は車屋をたのみ蜜柑箱に入れて
裏の庭先にて執行致候。
ただし主人「三四郎」執筆中につき
御会葬には及び不申候(もうさずそうろう)。
そして、卒塔婆には、ただ、猫の墓、と書いた。
2月21日は漱石の日