森由里佳 15年2月22日放送
猫と人④歌川国芳「おぼろ月猫の盛」
幕末を代表する浮世絵師、歌川国芳。
権威を嫌い、羽織・袴などを身につけず、
人から「先生」と呼ばれるのも嫌がる生粋の江戸っ子だった。
遊女の絵が禁じられた頃、
国芳が描いた遊郭の絵がある。
座敷の奥の遊女を覗く楽しそうな遊客たち。
羽織の紋はウナギや魚。着物の模様は小判や鈴。
提灯に書かれた店の名は「やまとや」ならぬ「にゃまとや」。
そう、国芳は、遊女も遊客も「猫」の遊郭を描いたのだ。
権威がなんだってんだ、とでも言うように、
国芳の絵は、時代のしがらみをすりぬける。
まるで、江戸の小路をするりと抜けゆく猫のように。