佐藤理人 15年4月5日放送
作家たちの副業⑥ 「カフカ」
作家フランツ・カフカの副業は公務員だった。
仕事はラクで短く、
実家暮らしで身の回りの心配もない。
しかし彼は不満だった。
時間は足らず、職場は不快で、
アパートはうるさい。
貴重な執筆時間であるはずの夜も、
明日彼女から手紙が来るだろうか、
来るとしたら何時だろうか、
そんなことばかり考えていた。
不眠症のせいで常に不安だったカフカ。
職場にある大きな台車が、彼には、
自分のために作られた棺桶に思えた。
どこへも行けない。何にもなれない。
傑作「変身」は、そんな絶望が生んだ、
やぶれかぶれの願望だったのだろうか。