2015 年 4 月 11 日 のアーカイブ

福宿桃香 15年4月11日放送

150411-01

ヴィクトリア女王

1837年。
弱冠18歳にしてイギリスの女王となったヴィクトリアは、
いとこのアルバートにひとめで恋に落ち、
すぐに結婚を決意してしまった。

王族の恋愛結婚が珍しい時代。
自らの思いを貫いた彼女が選んだウェディングドレスは、
王室の伝統にのっとったきらびやかなものではなく、
白いサテンのシンプルなドレス。
飾らず、誠実で、純粋。
まさに彼女の人柄を象徴する結婚だった。

晴れて夫婦となった後も、
アルバートを生涯愛し続けたヴィクトリア。
そんな女王の生き方に憧れた女性たちのあいだに、
純白のウェディングドレスを着る
習慣が広まっていった。

生涯、この人と添い遂げたい。
今日も世界中の花嫁たちが
ヴィクトリアと同じ願いを身にまとう。

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村山覚 15年4月11日放送

150411-02
小帽(Hat)
荒木経惟

1968年のとある日。
広告代理店の写真部で働いていた男が
同じ会社に勤める女性を撮影しながら言った。

 あ、笑わないで。
 さっきのムスーッとした表情の方がいい。

男の名は荒木経惟。当時27歳。
後に天才・アラーキーとして日本を代表する写真家になる男は、
ムスーッとした7つ年下の女性にひとめぼれした。

 私の人生は陽子との出会いからはじまった。

そこまで言い切った彼は、
妻・陽子との新婚旅行や日常を写した作品を発表しつづけた。
それは、ひとめぼれで始まった恋が愛に変わり、
別れの瞬間を迎えるまでのセンチメンタルな記録。

アラーキーは言う。

 「永遠」っていう言葉は好きじゃないけど、
 どれだけ相手と「愛ノ時間」をもてるか、
 そこだね、写真って。

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上遠野茜 15年4月11日放送

150411-03
Daniel Staemmler
ティム・バートン

その瞬間、映像を一時停止するように
世界のすべてが、ぴたり、と止まった。

静まり返ったサーカス会場で、
動いているのは主人公ひとりだけ。
飴細工のように固まった炎をかわし、
道化師の輪をくぐり抜け、
空中で浮いたままのポップコーンを手で払い落としながら
彼が歩み寄った先には、美しい女性の姿があった。

ティム・バートン監督の映画「BIG FISH」のワンシーン。
主人公が運命の人に出会ってひとめぼれするさまを、
ハリウッドを代表する鬼才は
時を止めることで鮮やかに表現してみせたのだ。

バートンは、あるインタビューでこんな言葉を残している。

「僕に未来はない。あるのは今だけだよ」

この一瞬を愛することができるなら、
人生はもっと素敵になるはずだ。

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藤本宗将 15年4月11日放送

150411-04

チェ・ゲバラ

革命家というものは、やはり情熱的なのだろうか。
キューバ革命の英雄チェ・ゲバラは
ゲリラに志願してきた女学生にひとめぼれをした。
のちに妻となるアレイダ・マルチ。

あるときゲバラが腕を骨折すると、
アレイダは持っていたスカーフで彼の腕を吊って手当てした。
それがよほど嬉しかったらしい。
ゲバラはのちにこう書き残している。

絹のスカーフ。これは特別なものだ。
腕を怪我したのではないかと彼女がくれた。
愛のこもった包帯として。
厄介なのは、僕が頭を割られたときの使い道だ。
だが、いい方法があった。
頭に巻いて顎を支えれば、
そのままスカーフとともに墓に行ける。
死んでも忠実でいられる。

その後ゲバラは新たな革命をめざし単身ボリビアに渡るが、
捕えられて命を落とす。
死後30年してようやくキューバに戻った遺骨のそばに、
妻はそっとスカーフを納めた。

最後まで、愛と革命に忠実な人生だった。

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