村山覚 15年4月11日放送
小帽(Hat)
荒木経惟
1968年のとある日。
広告代理店の写真部で働いていた男が
同じ会社に勤める女性を撮影しながら言った。
あ、笑わないで。
さっきのムスーッとした表情の方がいい。
男の名は荒木経惟。当時27歳。
後に天才・アラーキーとして日本を代表する写真家になる男は、
ムスーッとした7つ年下の女性にひとめぼれした。
私の人生は陽子との出会いからはじまった。
そこまで言い切った彼は、
妻・陽子との新婚旅行や日常を写した作品を発表しつづけた。
それは、ひとめぼれで始まった恋が愛に変わり、
別れの瞬間を迎えるまでのセンチメンタルな記録。
アラーキーは言う。
「永遠」っていう言葉は好きじゃないけど、
どれだけ相手と「愛ノ時間」をもてるか、
そこだね、写真って。