蛭田瑞穂 15年4月12日放送
aoryouma
花とことば⑧ 梶井基次郎
櫻の樹の下には屍体が埋まっている!
これは梶井基次郎の短編小説
『櫻の樹の下には』の冒頭の一節。
主人公の語り手にとって、
爛漫と咲き乱れる桜はあまりにも美しすぎる。
その美しさが彼を不安にさせる。
そこで彼は想像してみる。
すべての桜の木の下に屍体が埋まっていると。
腐乱した屍体を養分にして桜は美しい花を咲かせる。
そう思うことで彼は心の均衡を取り戻す。
春。
いっせいに咲き、いっせいに散る桜に、
日本人は死のイメージさえ重ねる。
日本人にとって桜ほどとくべつな花はない。