伊藤健一郎 15年4月18日放送
mpieracci
あの頃、あなたに憧れた。(スガシカオの場合)
シンガーソングライター、スガシカオ。
若き日のスガは、デビューに先駆け、
敬愛する村上春樹にできたてのアルバムを送りつけた。
差出人不明のCDが届いたその日のことを、村上はこう語る。
「なんか変てこな名前の歌手だな」と思いつつ、
とりたてて期待もせずに、そのCDをかけてみた。
何かべつのことをしながら片手間に聴いていたのだが、
聴こえてくる音楽の新鮮さに、はっとさせられることになった。
スピーカーの前に座り、居住まいを正して、
もう一度始めから聞きなおしてみた。
そして「うーん、これ、悪くないじゃん」とあらためて思った。
村上が、特に気に入ったのは『月とナイフ』。
その曲は、こんな一言で始まる。
ぼくの言葉が足りないのなら
ムネをナイフでさいて えぐり出してもいい
スガがデビューして、もうすぐ20年。
送りつけられなくても、村上春樹はスガシカオを聴き続けている。