東美歩 15年5月30日放送
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下澤理如④ 開発エピソード
炊飯器や、ホームベーカリーなど、
数々のヒット家電を開発してきた下澤理如。
家電の街、秋葉原に出向くことは
ほとんどなかったという。
かわりに彼が足を向けたのは、銀座だった。
高級ブランドショップやアート作品を眺め、
流行のレストランを食べ歩いた。
ある日の、ショットバーでのこと。
下澤の前に、黒ビールが運ばれてきた。
粒がそろった、きめ細かくクリーミーな泡が印象的だった。
その秘密は、缶に仕掛けられていた小さな玉。
プルトップを空けると、ビールの中を飛び回り、
泡を発生させていたのだ。
工場に帰るやいなや、
下澤は、炊飯器のふたに、玉を仕掛けてみた。
炊飯器の中で、米がおどりだした。
できあがったご飯は、今までとは比べ物にならないくらい、
ふっくらと炊きあがった。
「だから、僕は銀座に通うんだ」
そして、下澤は、こう付け加えた。
「電気屋を眺めていたって、新しいアイデアは生まれない。
だって、そこに並んでいる家電は、すでに過去のものじゃないか」