森由里佳 15年6月21日放送
Christopher Combe Photography
太陽⑤ ひかりに酔う
宮沢賢治は“共感覚”の持ち主だという研究がある。
文字に色を感じたり、現象に味を感じたりする人だというのだ。
彼が感じていた世界を味わうには、彼の作品を読むことだ。
たとえば「チュウリップの幻術」。
あの花の盃の中からぎらぎら光ってすきとおる蒸気が
丁度水へ砂糖を溶かしたときのように
ユラユラユラユラ空へ昇って行くでしょう。
(中略)
そして、そら、光が湧いているでしょう。
おお、湧きあがる、湧きあがる、
花の盃をあふれてひろがり
湧きあがりひろがりひろがり
もう青ぞらも光の波なみで一ぱいです。
(中略)
湧きます、湧きます。ふう、チュウリップの光の酒。
どうです。チュウリップの光の酒。
花からあふれるその酒はきっと、
太陽の味がしたにちがいない。