2015 年 6 月 27 日 のアーカイブ

佐藤理人 15年6月27日放送

150627-01

ドラえもんの作り方①「ポロンちゃん」

 破滅だ! 
 
1969年のある日、漫画家藤子・F・不二雄は、
そう叫びながら自宅の階段を駆け下りた。

新連載のアイデアが何ひとつ思い浮かばない。
焦燥感に駆られて廊下に足を踏み出した瞬間、
何か丸いものに躓いた。 

 ポロン♪

それは娘の起き上がりこぼし。人形が奏でる音に合わせて、
頭の中に散らばったパズルのピースが次々とハマっていく。
 
近所のどら猫。未来のロボット。
ポケットの中の秘密道具。タイムマシン。

 パパ、ポロンちゃんを蹴飛ばしちゃダメッ!

娘の声で我に返ると、そこにはもうドラえもんがいた。

それから半世紀近くに渡り、
自分の発明が世界中の子供達を虜にすることなど、
彼はまだ知る由もなかった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

150627-02
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ドラえもんの作り方②「少年の心」

子どものリアルな姿を描く。
それは漫画家にとって最も難しいことのひとつ。

目線の高さに気づかず、
つい子どもの姿をした大人を描いてしまう。

しかし「ドラえもん」の作者、
藤子・F・不二雄はそんな悩みとは無縁だった。

彼は執筆の合間を縫って、
三人の子どもたちにたくさんの本を読んであげた。
トムソーヤの冒険。ファーブル昆虫記。
子どもの目線で共に驚き、ワクワクすることで、
自分もまた一人の子どもに還ることができた。

彼のタイムマシンは引き出しの中ではなく、
本棚にあった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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ドラえもんの作り方③「感動の味」

大長編ドラえもんのシリーズ第一作、
「のび太の恐竜」は「野生のエルザ」から生まれた。

親を失った子ライオンのエルザを育てたのち、
野生を取り戻すためサバンナに帰す感動の実話。

「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄は、
愛する者を愛するが故に突き放す、
その自己犠牲の心に感銘を受けた。

「のび太の恐竜」のラストシーンは、
目の肥えた大人も唸る辛口のハッピーエンド。

子ども向けの漫画だからこそ、
メッセージはお子様ランチにしない。

それもまた、
映画を観てくれる子どもたちへの愛だった。

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佐藤理人 15年6月27日放送

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ドラえもんの作り方④「SF」

 ありそうもない話をありそうに描きたい

それが「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄の夢。

日常のありふれた出来事ほど、
視点を変えればワクワクする冒険になる。

彼は言う。

 僕にとってのSFは、
 サイエンスフィクションではなく、
 「少し不思議」のこと

民話や伝承など、この世の言い伝えの多くは不思議な話。
昔々、おじいさんがおばあさんと若い娘と三角関係に落ちて…
といったリアルな話はひとつもない。

想像力。それは神様が人間にくれた、
現実を生き抜く力なのだろうか。

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