ドラえもんの作り方①「ポロンちゃん」
破滅だ!
1969年のある日、漫画家藤子・F・不二雄は、
そう叫びながら自宅の階段を駆け下りた。
新連載のアイデアが何ひとつ思い浮かばない。
焦燥感に駆られて廊下に足を踏み出した瞬間、
何か丸いものに躓いた。
ポロン♪
それは娘の起き上がりこぼし。人形が奏でる音に合わせて、
頭の中に散らばったパズルのピースが次々とハマっていく。
近所のどら猫。未来のロボット。
ポケットの中の秘密道具。タイムマシン。
パパ、ポロンちゃんを蹴飛ばしちゃダメッ!
娘の声で我に返ると、そこにはもうドラえもんがいた。
それから半世紀近くに渡り、
自分の発明が世界中の子供達を虜にすることなど、
彼はまだ知る由もなかった。