2015 年 7 月 5 日 のアーカイブ

大友美有紀 15年7月5日放送

150705-01

「作家の時間割」トーマス・マン

午前8時前に起きる。
妻とコーヒーを飲み、
風呂に入って着替え、
8時半に妻と一緒に朝食をとる。
9時に書斎に入ったら、来客にも電話にも家族の呼びかけにも
一切応じない。
ベニスに死す、魔の山などを著したトーマス・マンの
仕事の時間割だ。

 すべての文を完璧に
 すべての形容詞を的確に
 歯を食いしばって一歩ずつ、ゆっくりと進む

子どもたちは9時から正午までは
絶対に物音を立ててはいけないと躾けられた。

自分にも家族にも厳しい創作活動だった。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-02

「作家の時間割」オノレ・ド・バルザック

午後6時に軽い夕食をとった後、ベッドに入って寝る。
午前1時に起きて書きもの机の前に座ると7時間ぶっ通しで書く。
午前8時から1時間半仮眠。
午前9時半から4時まで仕事。
19世紀フランスを代表する作家バルザックは、
自分を容赦なく追い込んだ。
大きく膨れ上がった文学的野心と次々に訪れる借金取りと
際限なく飲むコーヒーがそれを後押しした。

 私は生きているのではない。
 自分自身を、恐ろしいやり方で消耗させている。
 だが、どうせ死ぬなら、
 仕事で死のうと他のことで死のうと同じだ。

自身を削り、1日1日が、日なたにおいた氷のように溶けていくと感じながら、
90篇あまりにわたる「人間喜劇」を執筆したのだ。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-03

「作家の時間割」ボーヴォワールとサルトル

 人は女に生まれるのではない、女になるのだ

「第二の性」を著した女性作家シモーヌ・ド・ボーヴォワール。
20世紀フェミニズム運動の象徴的存在であり、
実存主義の哲学者サルトルのパートナー。
二人の間には「お互いに自由に恋愛し、それを一切隠し立てしない」
という取り決めがあった。

ボーヴォワールは朝起きて恋人とお茶を飲んでから
10時ごろに仕事を始める。1時ごろまで続けると、
サルトルのところへ行って昼食をとる。
恋人と一緒の時もあった。
それからサルトルのアパートで3、4時間、
黙って二人で仕事をする。
恋人がいるときは、夕食の後、自分のアパートに帰る。

サルトルは、自分のアパートで正午まで仕事をすると、
秘書が予定をいれた会合に1時間ほど出かける。
1時半にはボーヴォワールと一緒に食事してから仕事。
夜は政治集会に出かけたり、社交の場に行ったり、
ボーヴォワールと映画を見たり。
そしてバルビタール系睡眠薬を飲んで
2、3時間死んだように眠る。

 それほど長時間働かなくても、豊かな結果を生むことはできる。
 とサルトルは言う。

2人の奇妙で几帳面な関係は50年という長時間続いたのだった。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-04

「作家の時間割」ジョルジュ・サンド

ほとんど毎晩、最低でも20枚の原稿を書く。
女性作家、ジョルジュ・サンド。
男装趣味や数々の男性遍歴、ショパンとの逃避行など、
自由奔放なイメージがあるが、仕事ぶりは真面目だった。
いつも夜遅くに執筆する。
それは10代の頃、病弱な祖母の世話をしていて
身についた習慣だった。

 夢遊病のようになって書いていたこともあった。
 書いたものを棚の上に置いておかなかったら
 タイトルすら思い出さなかっただろう。

それでも彼女は書く。
夜はサンドが一人で考えることのできる
唯一の時間だったから。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-05

「作家の時間割」シラー

夜、突然、机の前の椅子にどすんと座る。
それから冬には午前4時か5時まで机についている。
夏は午前3時まで。
そのあとはベッドに入り、たいてい9時か10時まで寝る。

ドイツの詩人で歴史学者、哲学者、劇作家でもあった
フリードリヒ・シラー。
邪魔が入るのを嫌い、ほとんど夜にだけ仕事をした。
手元には濃いコーヒーかワイン入りのチョコレート。
年代物のライン産ワインかシャンパンということも多かった。
それらをときどき口にして疲れをとる。
そして、ひっきりなしにタバコを吸う。
嗅ぎタバコも欠かせなかった。
そのうえ、仕事部屋の引き出しのひとつに
腐ったリンゴをいっぱい入れていた。
リンゴが腐敗していくにおいが執筆を促す刺激として
必要だと考えていたのだ。
この習慣のせいでシラーは病気がちになっていった。
それでも深夜の創作をやめられなかった

 我々は貴重な財産 -時間- を軽んじてきた。
 時間の使い方を工夫することによって
 我々は自分を素晴らしい存在に変えることがことができる

「歓喜に寄せて」。のちにベートーヴェンが「第九交響曲」を書いた詩も、
この邪魔の入らない時間に生まれたのかもしれない。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-06

「作家の時間割」パトリシア・ハイスミス

午前中に3、4時間執筆し、調子が良ければ2千語ほど書き上げる。

「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」などの作家、
パトリシア・ハイスミス。
ベッドの上に座り、タバコと灰皿、マッチ、
コーヒーの入ったマグカップ、
ドーナツと砂糖を持った皿などをまわりに置く。
そして、まるで胎児のような姿勢で書く。

  執筆は喜びの源というよりは強迫観念のようなもので
  仕事がないと苦しくなる。
  現実の生活は仕事、すなわち想像の世界にしかない。

  
人付き合いが苦手で孤独。
書くと言う行為をできるだけ楽しいものにするために、
規律や自制といったものを一切避けた。
そして、常識の捕われない
サスペンスの傑作を次々を生み出していった。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-07

「作家の時間割」フィリップ・ロス

毎日、だいたい10時から6時まで書く。
途中で昼食のため1時間休憩する。
夜はいつも本を読む。
「素晴らしきアメリカ野球」の作者、
フィリップ・ロス。
夕食の後にまた仕事場に戻りたかったら
戻って2、3時間仕事をする。
深夜2時でも5時でも目が覚めて仕事をすることもある。

  僕は救命救急医で、仕事場は救命救急室。
  そして患者は僕自身だ。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-08

「作家の時間割」サマセット・モーム

執筆は毎日、午前中の3、4時間。
1日千語から千五百語書くことにしている。
午前中の仕事を正午ごろ終えても、
まだ書きたくてうずうずしていることがあった。
「月と六ペンス」の作者、サマセット・モーム。
 
 書いているとき、ある登場人物を作り上げていくとき、
 それは常に私につきまとって、頭の中を占領している。
 そいつは、生きているんだ。
 もしこれを自分の人生から切り離したりしたら、
 とても寂しい人生になってしまうだろう。

 
モームはなにかを見ながら書くことはできないと信じていた。
机はいつも、なにもない壁に向けていた。
書くことは、生きることに近い。

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