蛭田瑞穂 15年7月19日放送
こども② 谷崎潤一郎
谷崎潤一郎は
自分の生い立ちをできる限り詳細に綴ってみようと、
70歳で随筆集『幼少時代』を執筆した。
いちばん古い記憶のこと。父と母のこと。
生まれ育った街のこと。小学校の恩師のこと。
古い記憶を総動員して幼い日のことを振り返る谷崎。
そしてあとがきでこう述べる。
現在自分が持っているものの大部分が、
案外幼年時代に既に悉く芽生えていたのであって、
青年時代以後においてほんとうに身についたものは、
そんなに沢山はないような気がするのである。