伊藤健一郎 15年7月25日放送
comedy_nose
背筋を凍らせる人 鈴木光司
「そのビデオを見た者は、一週間後に呪い殺される」
作家、鈴木光司を一躍有名にしたのは、
ホラー小説『リング』だった。
執筆を始めた当時、鈴木の家庭には生まれて間もない長女がいた。
家計は妻に頼むかわりに、家のことは自分が引き受ける。
慣れない育児に奔走する中、構想を練った。
ある日の執筆中、ふと一本のビデオテープに目が留まる。
幼い長女が何気なく差し出したものだった。
そこで鈴木は思いつく。身の毛もよだつ、呪いのビデオを。
鈴木は、自身の作品をこう論ずる。
リングシリーズはホラー小説でありながら、
人間を信じる、人類の明るい未来を信じる。
そんな願いが込められている。
まだ無名だったあの頃、鈴木は必死に信じたのかもしれない。
自分と家族の明るい未来を。