伊藤健一郎 15年7月25日放送
plancas67
背筋を凍らせる人 楳図かずお
面白いものを作りたかったら、人間の本能を突けばいい。
これは、楳図かずおの言葉だ。
ホラー漫画の名手として知られる彼は、
あるときこんな胸中を打ち明けた。
僕はこれまで、誰も描かないような
おどろおどろしい作品をたくさん描いてきました。
でもそれは、怖い話をつくりたかったからではなく、
「恐怖」という最も本質的な感情を通して人間を描きたかったからです。
「美しい」という感情もそう。
それらを抜きに、人間を描くことはできません。
天才と称されることもあれば、狂人と揶揄されることもある楳図。
美しさに怖いほどの執着をみせる人間を描いた
『洗礼』という作品には、こんな問いかけがある。
狂った世界の中にただ一人狂わない者がいたとしたら
はたしてどちらが狂っていると思うだろう?