2015 年 7 月 のアーカイブ

大友美有紀 15年7月5日放送

150705-05

「作家の時間割」シラー

夜、突然、机の前の椅子にどすんと座る。
それから冬には午前4時か5時まで机についている。
夏は午前3時まで。
そのあとはベッドに入り、たいてい9時か10時まで寝る。

ドイツの詩人で歴史学者、哲学者、劇作家でもあった
フリードリヒ・シラー。
邪魔が入るのを嫌い、ほとんど夜にだけ仕事をした。
手元には濃いコーヒーかワイン入りのチョコレート。
年代物のライン産ワインかシャンパンということも多かった。
それらをときどき口にして疲れをとる。
そして、ひっきりなしにタバコを吸う。
嗅ぎタバコも欠かせなかった。
そのうえ、仕事部屋の引き出しのひとつに
腐ったリンゴをいっぱい入れていた。
リンゴが腐敗していくにおいが執筆を促す刺激として
必要だと考えていたのだ。
この習慣のせいでシラーは病気がちになっていった。
それでも深夜の創作をやめられなかった

 我々は貴重な財産 -時間- を軽んじてきた。
 時間の使い方を工夫することによって
 我々は自分を素晴らしい存在に変えることがことができる

「歓喜に寄せて」。のちにベートーヴェンが「第九交響曲」を書いた詩も、
この邪魔の入らない時間に生まれたのかもしれない。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-06

「作家の時間割」パトリシア・ハイスミス

午前中に3、4時間執筆し、調子が良ければ2千語ほど書き上げる。

「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」などの作家、
パトリシア・ハイスミス。
ベッドの上に座り、タバコと灰皿、マッチ、
コーヒーの入ったマグカップ、
ドーナツと砂糖を持った皿などをまわりに置く。
そして、まるで胎児のような姿勢で書く。

  執筆は喜びの源というよりは強迫観念のようなもので
  仕事がないと苦しくなる。
  現実の生活は仕事、すなわち想像の世界にしかない。

  
人付き合いが苦手で孤独。
書くと言う行為をできるだけ楽しいものにするために、
規律や自制といったものを一切避けた。
そして、常識の捕われない
サスペンスの傑作を次々を生み出していった。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-07

「作家の時間割」フィリップ・ロス

毎日、だいたい10時から6時まで書く。
途中で昼食のため1時間休憩する。
夜はいつも本を読む。
「素晴らしきアメリカ野球」の作者、
フィリップ・ロス。
夕食の後にまた仕事場に戻りたかったら
戻って2、3時間仕事をする。
深夜2時でも5時でも目が覚めて仕事をすることもある。

  僕は救命救急医で、仕事場は救命救急室。
  そして患者は僕自身だ。

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大友美有紀 15年7月5日放送

150705-08

「作家の時間割」サマセット・モーム

執筆は毎日、午前中の3、4時間。
1日千語から千五百語書くことにしている。
午前中の仕事を正午ごろ終えても、
まだ書きたくてうずうずしていることがあった。
「月と六ペンス」の作者、サマセット・モーム。
 
 書いているとき、ある登場人物を作り上げていくとき、
 それは常に私につきまとって、頭の中を占領している。
 そいつは、生きているんだ。
 もしこれを自分の人生から切り離したりしたら、
 とても寂しい人生になってしまうだろう。

 
モームはなにかを見ながら書くことはできないと信じていた。
机はいつも、なにもない壁に向けていた。
書くことは、生きることに近い。

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佐藤延夫 15年7月4日放送

150704-01
Ian Norman (Lonely Speck)
わたしの宇宙 ウィレム・ド・ジッター

20世紀初頭、アインシュタインの宇宙方程式は、
世界中の学者に影響を与えた。
そのひとりが、オランダの天文学者、
ウィレム・ド・ジッター。
彼の提唱する「ド・ジッター宇宙」とは、
理論的に言えば、密度と圧力がともにゼロで
宇宙項が正の値をとる宇宙。
常に加速しながら膨張し続け、始まりも終わりもない。
時をさかのぼればどんどん小さくなっていくが、
大きさがゼロになることはないという。

もうすぐ七夕。
あなたの頭上には、どんな宇宙が見えますか。

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佐藤延夫 15年7月4日放送

150704-02

わたしの宇宙/アレクサンドル・フリードマン

一般相対性理論を提唱したのは、物理学者のアインシュタイン。
それを天文学者のウィレム・ド・ジッターが探り、
次にこのゲームに参加したのは、数学者のアレクサンドル・フリードマンだった。
アインシュタインの示した問いを数学的にアプローチしようと試みた。
フリードマンの宇宙は、膨張と収縮のサイクルを果てしなく繰り返す。
まるで、バウンドするボールのように。
この説について天文学的な結論は求めなかったが、
のちにフリードマンの考える宇宙は、高く評価されることになる。

もうすぐ七夕。
宇宙は、あらゆる学問の坩堝だった。

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佐藤延夫 15年7月4日放送

150704-03
Ernie-e
わたしの宇宙 ジョルジュ・ルメートル

アインシュタインの理論を元にした宇宙研究とは、
むらがなく、あらゆる方向に同じ速度で膨張することを意味した。
「その宇宙は、いかにして始まったか」
という命題に対し、ベルギーの天文学者ジョルジュ・ルメートルは新たな説を唱えた。
宇宙は熱い状態で始まって膨張する。
いわゆるビッグバン理論である。
彼はそれを、こんな言葉で表現した。

 この世界の進化は、終わったばかりの花火にたとえられる。

もうすぐ七夕。
きっと宇宙は、花火の余韻のように静かだ。

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佐藤延夫 15年7月4日放送

150704-04

わたしの宇宙 クルト・ゲーデル

晩年のアインシュタインを夢中にさせた数学者は、クルト・ゲーデル。
彼の有名な業績のひとつが、数論の不完全性定理だ。
数学の理論は完全ではなく、
自分自身に矛盾がないことを証明できない、というもの。
そして彼は、アインシュタインの方程式に新たな解を見つけた。
ゲーデルの宇宙は、回転する宇宙だった。
膨張せず、物質はすべて軸のまわりを一定不変の速度で回転する。
この宇宙では、時間旅行が可能になるそうだ。
さすがのアインシュタインも肝をつぶしたというのも納得がいく。
ただし実際に時間旅行をするには、
光に近い速さと、不自然な形に配置された物質が必要になるそうだ。

もうすぐ七夕。
時間旅行をすれば、織姫と彦星に会えるだろうか。

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