戦争と平和 渡辺白泉(わたなべはくせん)
戦場で炸裂する爆弾。
町中に鳴り響く軍歌。
映画や小説の中の戦争はいつも、激しい音に包まれている。
そうした戦争の描き方に、
新しい表現を切り開いたのは、俳句だった。
俳人、渡辺白泉。
70年前の戦争中、こんな句を詠んだ。
戦争が、廊下の奥に立っていた
猫のように、どろぼうのように、
静かな日常に音もなく侵入し、
いつの間にかその姿をはっきりさせる、戦争。
気づいたときには家庭の奥まで入り込んでしまっている、その不気味さ。
この一句があるおかげで、
私たちは、戦争というものの始まり方に、
あらためて注意することができる。