石橋涼子 15年8月30日放送
涼菓の話 カルメンの氷菓子
カルメンと言えば、
すべての男を惑わせる危険な女の代名詞だ。
カルメンの原作は、
スペインを訪れたフランス人学者の一人称で語られている。
語り手である学者もカルメンの魅力に惹かれたが、
ドン・ホセのように破滅するほどには溺れなかった。
それは、カルメンとの出会いが
灼熱のスペインの太陽の下ではなく日没時だったからかもしれない。
ふたりで食べたのが肉料理ではなく氷菓子だったからかもしれない。
学者はこう語る。
今日は一つ、悪魔の侍女とひざをつきあわせて
氷菓子を食べてやれ。
旅先ではどんなことでもやって見なくては。
いやいや、冷たい氷菓子で心身ともに涼んだおかげで
カルメンの熱に囚われずに済んだのではないでしょうか、先生。