熊埜御堂由香 15年9月27日放送
onigiri-kun
お茶のはなし ひとりの時間
カフェですごす至福の時間といえば、
誰かと笑い合いおしゃべりをする楽しさもあるが、
ひとりで外の景色を眺めながらぼんやりするという穏やかさもある。
そんなひとりの時間が似合うカフェが石川県加賀市にある。
物理学者、中谷宇吉郎の功績をつたえる
雪の科学館に併設するカフェ「冬の華」だ。
中谷宇吉郎は、人口の雪をつくることに世界ではじめて成功するなど、
雪の結晶を研究した第一人者として知られている。
映画「霜の華」を1948年に発表し、
映画プロダクションの設立にも尽力した。
科学者として、芸術家として、
雪を時に冷静に、時に優しい視点で見つめ続けた。
彼が生まれた石川県加賀市の小さな温泉街、
片山津温泉にあるカフェでは、
冷たい飲み物が雪の結晶を思わせる
六角形のグラスで運ばれてくる。
ガラス張りの大きな窓の先には白山連邦が横たわり、
その景色を眺めているだけで、心が満たされていく。
雪は天から送られた手紙である。
宇吉郎の残した言葉そのままに、
まるで、しんしんと降る雪に耳を澄ましているような
ゆったりした時間が、カフェ「冬の華」には流れている。