佐藤延夫 15年10月03日放送
井上井月と酒
漂泊の俳人、井上井月は
いつも腰に瓢箪をぶら下げていた。
周りからは、井月がやってきたら金を渡しても無駄。
瓢箪に酒を詰めてやると喜んで帰る、とまで言われた。
俳句の弟子が造り酒屋の息子とわかると
そこに半年ほど泊まり込み、
どこに行っても勧められるだけ呑んだ。
「酒上々」「銘酒馳走」「酒粗末」など、
こっそり評価をつけていたから恐ろしい。
そんな毎日だから、
酒にまつわる句は山のように残っている。
一枝は 肴代りや 菊の花
紅葉見に 又も借らるゝ 瓢かな
見えるもの全てが、酒のアテになってしまうのだ。