佐藤延夫 15年10月03日放送
Gert Jan
井上井月と秋
漂泊の俳人、井上井月は
慣れ親しんだ信州、伊那谷で数々の秋の句を詠んだ。
たとえば駒ヶ根の麓に、白い稲の花が咲き誇る景色や
黄金色に輝く稲穂、秋の月。
稲刈りを前に、田んぼから水が引かれていくさま。
夕暮れ、紅葉、そして新しい酒。
言いようのない秋の静けさや寂しさ、喜びを、
五七五の中にそっとしまい込んだ。
落栗の 座を定めるや 窪溜り
これは、伊那谷を終の棲家にする覚悟をした一句とも言われている。
風を受けて転がる栗が、ここで止まった。