熊埜御堂由香 15年10月18日放送
日本語のはなし せつない気持ち
翻訳家の柴田元幸さんと、
日本在住の劇作家、ロジャー・パルバースさんが
「せつない」という日本語をテーマに対談したことがある。
「せつない」にぴったりあてまはる
英語は存在しないとよく言われる。
その対談では、
Heartbreaking,
sentimental
などロジャーさんがせつないに近い英語表現を
いくつかあげて柴田さんと「せつない」気持ちを考えた。
日本人には、近松門左衛門から小津安二郎まで
「どうあがいても幸せになれない」という前提から出発した、
思い通りにならない人生を受け容れる姿勢がある。
そこに美しさや潔さを見いだす、独特の感性から
「せつない」という気持ちは、生まれているのでは
とふたりは結論づけた。
そんな結論にちょっと胸がうずいたら、
あなたも「せつない」気持ち、上級者かもしれない。