身長152センチの画家
男は、上半身だけが大人の姿をしていた。
成長期に足の病気にかかり、
太ももから下の成長が止まっていたのだ。
いびつな身体を、山高帽とスーツで包み、
毎晩パリの歓楽街に向かった。
目的は、ムーランルージュ。
パリで最もにぎやかなナイトキャバレーだ。
浴びるように酒を飲み、
踊り子達のショーを食い入るように見つめた。
アールヌーヴォーの小さな巨匠、
トゥールーズ・ロートレック。
彼が好んで描いたのは、名もなき娼婦や踊り子。
幸福とは言えぬ運命から這い上がる、強い女の姿だった。トゥールーズ・ロートレック。