2015 年 12 月 のアーカイブ

小野麻利江 15年12月27日放送

151227-01

掃除のはなし 掃除にまつわるロシアの風習

ロシアの風習の中に、
掃除にまつわる興味深いものがある。
それは、家に来た客が帰ったあと、
家に着くまで床掃除をしてはいけない。というもの。

この風習は、かつてお葬式の後、
井戸から汲んだ水で床を拭き、
「亡くなった人は二度とこの家に帰ってこない」
としたことに由来する。
それが転じて、旅立つ人を亡くなった人にしてはならないと
旅の間の床掃除が禁じられ、
さらには、帰ってゆく客に対しても
無事を祈って、床掃除を控えるのだという。

だから、お客さんが帰ったあと
すぐに床掃除を始めようとする人がいたら、
ロシアの人は、こうたしなめるそうだ。

 すべて洗ってしまうと、
 出て行った人に
 道がなくなってしまう。

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小野麻利江 15年12月27日放送

151227-02
Terry Johnston
掃除のはなし ある芸人のトイレ掃除

「トイレをきれいに掃除しろ」。
昔、とある若手芸人が、師匠にそう言われた。
以来その芸人は師匠の言いつけを守り、
どこに行ってもトイレをきれいに掃除した。
ロケ先の公園のトイレがどんなに汚くても、
自分が使ったあとは必ず掃除をし、
時には、隣のトイレまできれいにした。
トイレットペーパーが無いトイレだって、
手を使ってきれいにした。

トイレを借りるたびに、トイレをきれいにし続けて。
気づけば芸歴もトイレ掃除も、30年以上。
お笑い番組はもとより、
小説を書いても、映画をつくってももてはやされる、
大物芸人になっていた。

 自分は才能があるとは思わないのに、
 何をやっても評価を受けるのは、
 もしかして、トイレ掃除のせいかもしれない

そう語る大物芸人こそ、北野武である。

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石橋涼子 15年12月27日放送

151227-03

掃除のはなし 泉鏡花のそうじへのこだわり

幻想的な作風と美しい文体で知られる作家の泉鏡花は
極度のキレイ好きでも有名だ。

生ものは一切口にせず、お菓子も火で炙ってから食べた。
大好きなお酒は、燗を通り越して
ぐつぐつ煮立ててからいただいたという。

そんな鏡花だから、掃除へのこだわり方も徹底している。
常に家の中がきれいに掃き清められているのは当然として、
階段は高さによってホコリの量や汚れ方が違うと考え、
上、中、下段それぞれに専用のぞうきんをつくった。
もちろん、台所のふきんも戸棚用から食器用まで、
様々な用途に合わせて分けられている。
さらには、二階のホコリが落ちてくると言って
一階の天井板の目地に紙を貼ったという。

ここまで徹底されたら周りの人間はさぞ困っただろうと思うが、
意外なことに、夫婦の仲は終生睦まじかったし、
鏡花と親しい挿絵画家も「先生の個性」と言う程度で
さらりと受け止めていた。

生涯、一貫した作風の作家らしい妥協の無さと思われたか、
はたまた、デビュー時に畠芋之助と名乗るような
独特な茶目っ気のおかげだろうか。

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熊埜御堂由香 15年12月27日放送

151227-04
karinckarinc
掃除のはなし 親子関係の大掃除

断捨離の提唱者、やましたひでこさん。
彼女の母は典型的なモノを溜め込むひとだった。
それが嫌で、結婚後も実家に帰るたびに
捨てに捨てに捨てていた。

そうするうちに母との関係はどんどん悪くなる。
なぜ母のために片付けているのに感謝されないの?
そう思ったとき
無意識のうちに片付けを通して
母に報復していたと気づいた。
生き方が違うんだなと思えるようになってから
親子関係も修復していったという。

母の前では、断捨離を捨てること。
それは、娘が母から完全に自立できた
親子関係の大掃除だったのかもしれない。

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熊埜御堂由香 15年12月27日放送

151227-05

掃除のはなし 川上弘美の幸田文ごっこ

芥川賞作家の川上弘美さん。
彼女のエッセイでは、たびたび、主婦としての家事のあれこれが
ちょっととぼけた味で描かれる。

震災のとき、節電のために掃除機を使うのをやめて
ほうきと雑巾を使って掃除をしていた時のこと。
文豪、幸田露伴に家事を厳しくしつけられた
娘の幸田文になりきって、掃除をしてみようと思いついた。
幸田文ごっこと名付けてルールも設定した。
雑巾を絞る時、きっちり絞りきれているか?
隅から隅まで拭き残しはないか?
ほうきは正しく使えているか?
こんな具合に自分を厳しく叱りながら掃除をする。

家事の中で一番掃除が嫌いという川上さん。
ちょっとした現実逃避で、日常の掃除もなんとかやりきれる。
主婦の生活の知恵は、時に涙ぐましい。

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薄景子 15年12月27日放送

151227-06

掃除のはなし NYを変えたデヴィット・ガン

掃除。それは、環境を整えるだけでなく
人の心理や行動を変える偉大な力がある。

1980年代のニューヨークの犯罪件数を
激減させたのが、まさにこの掃除だ。

当時、地下鉄公団の総裁だったデヴィット・ガンは
地下鉄車両の落書きを徹底的に消すという対策を打ち出した。

すべての落書きが消された後、
増加する一方だった犯罪件数は90年代に激減、
年に60万件以上起きていた
地下鉄の重罪事件は75%も減ったという。

掃除は人の乱れを正し、心を磨いてくれるのだ。

来年の良い運気を願うなら、
今年の大掃除はいつもより気合をいれてはどうだろう。

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茂木彩海 15年12月27日放送

151227-07
白石准
掃除のはなし なくてもいいものを考える

掃除とは、捨てること。と一般的には解釈されるが
なくても良いものを選ぶ作業、とも言えるのではないだろうか。

掃除機で有名なダイソンは、
羽根をなくす、という掃除を
ある家電にほどこした。

そこで生まれたのが、羽根のない扇風機。

何十年も続く常識を、一掃することで
また新しい必要なものを生み出していく。

かの、スティーブ・ジョブスもこんな言葉を遺している。

 必要なものを考えるのは重要じゃない。
 必要じゃないものをどれだけ考えられるかだ。

ものの選び方ひとつで、いつもの掃除がちょっぴり楽になるのだとしたら。
この冬、試さない手は無いかもしれない。

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茂木彩海 15年12月27日放送

151227-08

掃除のはなし 掃除に必要な音楽

年末ともなると、頭にチラつく大掃除の3文字。
なんとか少しでも気分が乗るように、
掃除をするときは、お気に入りの音楽を流しながら。
そんな人も多いのではないだろうか。

ところが、昔の写真などを整理しているときに、
これまた昔の思い出がつまった曲が流れてしまうと話は違う。

手は止まり、なんとなくぼんやりしながら過去に身を馳せて
気づいたら時間が過ぎている。

そんなとき参考にしたいのが、
暮しの手帖社出版 「暮らしのヒント集」のこんな言葉。

 明日は起きぬけに行進曲をかけてみましょう。
 支度がテキパキとはかどるみたいです。

掃除をするぞ、と決めた日は、
音楽をつかって掃除にぴったりの空気に身を投じる。

そこまでしないと動かない、ずぼらな自分をちょっぴり笑ってやりながら、
大掃除。ぼちぼちはじめてみましょうか。

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阿部友紀 15年12月26日放送

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山川登美子 白百合の君の恋

「みだれ髪」の作者、与謝野晶子と肩を並べた歌人、山川登美子。

士族の家柄に生まれ、厳しく育てられた登美子が歌に目覚めたのは21歳の頃。
鉄幹という男性と、のちに鉄幹の妻になる与謝野晶子との出会いがきっかけだ。

鉄幹に「白百合の君」と呼ばれ、かわいがられ、
いつしか「白百合」の号で歌を詠むようになった登美子。

 君が手に ふれにし日より胸の緒の 小琴のしらべ たゞにいわれぬ

歌集「恋布」に寄せた、鉄幹への恋の歌は、
その上品さから、今もなお、多くの人々に愛されている。

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阿部友紀 15年12月26日放送

151226-02

山川登美子 白百合の君、白萩の君

みだれ髪の作者、与謝野晶子と競い合った歌人、山川登美子。

29歳で生涯を閉じた登美子が残した歌は多くないが、
ひとつひとつが名作として文学史に刻まれている。

 髪ながき 少女(をとめ)とうまれ しろ百合に
      額(ぬか)は伏せつつ 君をこそ思へ

登美子が、思い人・鉄幹に「白百合の君」と呼ばれるきっかけになった歌である。

一方で、鉄幹は与謝野晶子にも「白萩の君」という呼び名を与え、
女2人の恋心を競わせたそうだ。

しかし、登美子と晶子の関係は良好だった。
歌も恋も切磋琢磨し合う日々に、登美子は幸せを感じていたに違いない。

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