石橋涼子 15年12月27日放送

151227-03

掃除のはなし 泉鏡花のそうじへのこだわり

幻想的な作風と美しい文体で知られる作家の泉鏡花は
極度のキレイ好きでも有名だ。

生ものは一切口にせず、お菓子も火で炙ってから食べた。
大好きなお酒は、燗を通り越して
ぐつぐつ煮立ててからいただいたという。

そんな鏡花だから、掃除へのこだわり方も徹底している。
常に家の中がきれいに掃き清められているのは当然として、
階段は高さによってホコリの量や汚れ方が違うと考え、
上、中、下段それぞれに専用のぞうきんをつくった。
もちろん、台所のふきんも戸棚用から食器用まで、
様々な用途に合わせて分けられている。
さらには、二階のホコリが落ちてくると言って
一階の天井板の目地に紙を貼ったという。

ここまで徹底されたら周りの人間はさぞ困っただろうと思うが、
意外なことに、夫婦の仲は終生睦まじかったし、
鏡花と親しい挿絵画家も「先生の個性」と言う程度で
さらりと受け止めていた。

生涯、一貫した作風の作家らしい妥協の無さと思われたか、
はたまた、デビュー時に畠芋之助と名乗るような
独特な茶目っ気のおかげだろうか。

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