大友美有紀 16年1月3日放送
「小林一三」 結婚第一
阪急電鉄の創業者、小林一三は、
宝塚、阪急百貨店などで三千人以上の若い女性を擁していた。
一三は、その前途を誤らせないように努め、
その幸福を守ってやることを唯一の目的として、
「結婚第一主義」を常々説いていた。
それは決して「女は家庭に入れ」ということではない。
宝塚音楽歌劇学校で教育する方針も、
上手な女優を作るという考えは少しもなく、
ただ一人前の女性を作り上げたいとばかり考えています。
私がもし六百人の女生徒に、芸術専門の教育をしたら、
幾十人かの芸術家を生み出すことはさほど困難ではないと思います。
ただし、その幾十人かを作り出すために、残りの五百数十人は、
立派な芸術家にもなれず、さりとて、
家庭の奥様となるに相応しい教養をも受けていない、
中途半端な女性を作らねばならぬことになります。
芸術家になる天分のある者は、自分で道を開拓できる。
一三はそうではない女性たちの幸福を考えていたのだ。
平凡主義、大衆第一に通ずる考えである。