2016 年 1 月 31 日 のアーカイブ

高阪まどか 16年1月31日放送

160131-01

人生を変える塾講師 藤岡克義

静かな街の、小さな学習塾。
ここには、道にはぐれてしまった若者が集まる。

高校で落ちこぼれた者。
一度は就職したけれどすぐに辞めてしまった者。
騒ぎを起こして少年院にお世話になった者までいる。

塾長は、藤岡克義。
彼が、教壇にたつのは週にたった一度だけ。
しかも、その授業はホームルームだ。
「お前は何のために大学にいくのか?」と塾生に問い、考えさせる。
英語でも数学でもない。藤岡が教えるのは、勉強する理由だけだ。
その方法で落ちこぼれだった子供たちが有名大学に次々と合格していく。

「人生はやり直せる。」
自身も十代の頃筋金入りのワルだった藤岡はそれを一番よくわかっている。

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高阪まどか 16年1月31日放送

160131-02

ハリウッド女優、タルラ・バンクヘッド1

「そんな役はお断りよ。私に合うもの持ってきて。」

清純で、健気で、王子様と結ばれるヒロイン。
女優なら誰でも欲しがるそんな主役の座を頑なに拒み、
悪女やアバズレばかり演じたハリウッド女優がいた。
名はタルラ・バンクヘッド。

幼い頃、両親に愛してもらえなかった彼女は、
寂しさを埋めるように、次々と恋人をつくり、
恋の相手は、男性だけでなく、女性にまでおよんでしまう。
レズビアンに目覚めた彼女を、当時の世間は決して受け入れなかった。
タルラはそんな世の中にうんざりし、
社会の強制する女らしさというものに反発していったのだ。

そんな中、彼女が自分の進む道と思い定めたのは、
1920年代の女性に
唯一開かれた職業であった映画女優。
ありのままの自分を認めてほしい。
こうして、「社会の求める女性を演じない女優」が誕生した。

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高阪まどか 16年1月31日放送

160131-03

ハリウッド女優、タルラ・バンクヘッド2

関係をもった男性は数百人。
おまけに大酒飲みで、人の悪口を言ったらとまらない。
彼女が銀幕の中で見せる役柄は、悪女・魔女・アバズレ。
それはまさにタルラ・バンクヘッドそのものだった。
あくまで自分に正直に生きるタンラに対し、
世間の人々は「決して嘘をつかない女優」として、
尊敬の念さえ抱きはじめていた。

その人気は当時の大統領の目にも留まり、タルラはホワイトハウスに招待される。
パーティーの当日、彼女が自分に同行させたのは黒人の乳母。
「まさかこのホワイトハウスに黒人を。」
会場は驚き、どよめいた。
しかし周りのそんな反応に驚いたのは、むしろタルラの方だった。
早くになくなった実の母親のかわりに乳母を連れて行っただけなのだ。

それはアメリカの歴史上はじめて
黒人がホワイトハウスに入った瞬間だった。

アメリカの黒人差別の撤廃に一役買ったのは、
政治家でも、人権活動家でもなく、
どんな時でも貪欲に、自由奔放に生きた一人の女優なのだ。

1968年66歳でこの世を去ったタルラの最後の言葉は
「バーボンをちょうだい」だった。

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高阪まどか 16年1月31日放送

160131-04

アメリカ合衆国皇帝、ジョシュア・ノートン

「私、ジョシュア・ノートンはここにアメリカ皇帝となったことを宣言する。」
新聞社に押し掛けたノートンは堂々と宣言してみせた。
しかし、コロンブスの新大陸発見から、現在に至るまで、
アメリカには大統領はいても、皇帝などいたことがない。
それは、自己破産で狂気に陥った実業家、
ジョシュア・ノートンの妄想だった。

勝手に皇帝を名乗り、
これまた勝手に毎日勅令を発表したノートン。
しかし、その勅令は意外と的を得ていて、
瞬く間に自称皇帝は人気者になったという。

今では当たり前になった、クリスマスイルミネーション。
これも、ノートンの「クリスマスに街路樹を飾り付けるべし。」
という勅令から始まったことなのだ。
「思えばそれは真になる。」というのは、意外と本当かもしれない。

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檀上真里奈 16年1月31日放送

160131-05
junsuzu
その日の天使 中島らも

ひとりの人間の一日には、
必ずひとり「その日の天使」がついている。

絶望的な状況でしか、その日の天使には気づけない。
わかりやすく言えば、
自殺しようとした時に思いがけない友人から電話がかかってきたら、
その人がその日の天使。

これは中島らもの考え。

体調は悪い。仕事は山積み。家庭はもめている。
そんな状況でヨロヨロと帰宅していたとき、
夜更けの街で見つけた、彼のその日の天使はこれだった。

「おいも〜おいも。ふっかふかのおいも。」

何が解決した訳でもない。
しかしこの声に笑ってしまった。
そして、笑いは人をリラックスさせるのだ。

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檀上真里奈 16年1月31日放送

160131-06
Speaker resources
肩書きの話 ジョンレノン

ジョン・レノンには音楽活動を一切していない5年間がある。
それはヨーコとの間に息子が産まれたときだった。

「表舞台が恋しくないのか。」
「成功を捨てるなんて、正気じゃない。」
父親として生きるジョンに、周囲は否定的だった。

後にこの時を振り返った歌、「watching the wheels」がリリースされる。

「ただ回る車輪を眺める。僕はそれが好きなんだ。
メリーゴーランドにはもう乗らない。ふっきれたんだ。」

この歌を聴くと思う。
世界の何に価値があるか、それは自分で決めていいんだ。

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檀上真里奈 16年1月31日放送

160131-08

執着の話 フェルディナン・シュバル

フランスの郵便局員フェルディナン・シュバルは
ある日、道で石につまづいた。
石は見たことの無いような不思議な形をしていた。
それが、インスピレーションの瞬間。

その日から彼は、配達が終わると石を拾いに行き、
自宅の庭にそれらを積み上げるようになった。
取り憑かれたように、毎日、毎日。

彼を心配する者も、彼を馬鹿にする者もいた。

33年間。
石が壁となり、
建物となり、
宮殿となった。
その名も、「シュバルの理想宮」。
いまでは国の重要建造物に指定されている。

その前向きな執着心に、憧れずにはいられない。

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檀上真里奈 16年1月31日放送

160131-07
663highland
化粧の話 寺山修司

装飾の多い女を嫌う男は多い。
しかし、寺山修司はこう言った。

「私は化粧する女が好きです。
そこには、虚構によって現実を乗り切ろうとするエネルギーが感じられます。
顔をまっ白に塗りつぶした女には
「たかが人生じゃないの」というほどの余裕も感じられます。」

世間には、化粧を「武装」と考える人もいるけれど、
寺山修司のこの考えは、それとは少し違う。

自分を良く見せる、他人のための化粧より、
自分のなりたいものになる、自分のための化粧の方が、たしかに面白い。

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