2016 年 1 月 のアーカイブ

名雪祐平 16年1月30日放送

160130-02

首の行方 オリバー・クロムウェル1

367年前の今日、1649年1月30日。

イギリス国王チャールズ1世が
公開処刑された。

首が切り落とされた瞬間、
「うぉー」という
民衆の暗いどよめきが起きた。

国王を死に追いやったのは、
清教徒革命の主役、
オリバー・クロムウェル。

クロムウェルは
王族のシンボルカラーである
紫のマントを羽織って、現れた。

王の首を、自分にすげ替えのだ。

しかし、12年後の、同じ1月30日。
チャールズ1世の息子、
チャールズ2世によって、
自分の首が切られることになる。

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名雪祐平 16年1月30日放送

160130-03

首の行方 オリバー・クロムウェル2

335年前の今日、1661年1月30日。

ある男の遺体が、
遺体なのに、
首吊りの刑にされた。

イギリスの清教徒革命で
国王チャールズ1世を滅ぼした
オリバー・クロムウェルの遺体だった。

クロムウェルの死後、王政が復古し、
英雄のまま亡くなったはずが、
大反逆者となってしまったのだ。

首も刎ねられ、
ウエストミスター寺院の屋根に
25年間も晒しものになった。

ある日、暴風雨がやって来た。

首が、コロリと、地面に落ちた。

首は、それから300年の旅に出る。

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名雪祐平 16年1月30日放送

160130-04

首の行方 オリバー・クロムウェル3

首が、地面に落ちた。

イギリス国王の逆賊として晒し首になった
オリバー・クロムウェルの首。

その首を守衛の一人が拾った。
自宅の煙突に隠し、
娘にだけ秘密を明かし、亡くなった。

人は秘密を守れない。

誰の手によるものか、
「クロムウェルの首」は売りに出され、
90年後には見世物小屋で、
再び晒し首になったという。

首は人々の手を転々と、流転した。
金儲けに利用する者。
家宝として崇める者。

やがて1960年、
クロムウェルの母校である
ケンブリッジ大学に寄贈された。

クロムウェルの首に、
もう目はなかったが、
300年、人間の何を見てきたのだろう?

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名雪祐平 16年1月30日放送

160130-05
Mike Evangelist
新生命体 リチャード・スクレンタ

34年前の今日、1982年1月30日。

人類が、人類以外の
まったく新しい生命体を産んだ。

コンピューターウィルス
「Elk Cloner」である。

作者は、アメリカ・ピッツバーグの
15歳の高校生
リチャード・スクレンタ。

ともだちのパソコンAppleⅡに
数行のポエムを表示させるだけの
たわいないイタズラだった。

しかしいま、1年間でばらまかれる
新種のコンピューターウィルスは
2000万種類。

人類は、自ら産んだ悪い生命体と、
終わりなき世界大戦を戦っている。

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熊埜御堂由香 16年1月24日放送

160124-01
abakane
北欧のはなし リサ・ラーソンの優しいライオン

スウェーデンを代表する陶芸家、リサ・ラーソン。
ストックホルム郊外の自然に囲まれた自宅兼アトリエで
84歳の今も創作を続けている。

リサは、アトリエに来たすべてのひとを
スウェーデンのひとに欠かせないというお茶の時間、
「フィーカ」でもてなす。
そこには家族がつくった手作りのお菓子が並ぶ。
画家の夫や、その子ども、さらに孫たちが
集い、暮らしと創作が混じり合って、
リサの暖かみのある陶芸作品が生まれていく。

だからだろうか、
リサの代表作として知られる、
ころんと丸い陶器のライオンは
とても穏やかで優しい目をしている。

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石橋涼子 16年1月24日放送

160124-02
Peter Guthrie
北欧のはなし ハンス・J・ウェグナー

北欧インテリアのお店に行けば
必ず置かれている、
ハンス・J・ウェグナー デザインの椅子。

デンマークに生まれた彼は、
家具職人の経歴を生かし
木材を使った名作チェアを数多く生み出した。

生涯にわたり500脚以上の椅子をデザインした彼が
自宅の椅子でくつろいでいる写真が残っている。
どっかりと椅子に身を任せ、
大きく開いた足をアームに乗せた横座りの姿は
見ようによっては、行儀が悪いと見えるけれど、
ウェグナーは、
これが本来のイージーチェアの座り方だよ
と言ったのだという。

動くのが人間の本能だ。
という事実を常に尊重したウェグナーだからこそ、
自由にくつろげて、且つ、美しい椅子がつくれたのかもしれない。

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石橋涼子 16年1月24日放送

160124-03
storebukkebruse
北欧のはなし ニルス・トーソンと女性たち

北欧デザインを代表する陶磁器ブランド、
ロイヤル・コペンハーゲン。
多くの人が思い浮かべるのは、
白をベースにブルーの模様ではないだろうか。

そんなロイヤル・コペンハーゲンに
1960年代に人気を博した
「テネラ」という名前のデザインシリーズがある。

テネラの特長は、カラフルで大胆な絵柄。
ファンタジーに出てきそうな色彩豊かな鳥や、
細かな描きこみで螺鈿細工のような草花。
従来のブランドイメージとは異なり
多彩な絵柄を楽しむデザインシリーズを生み出したのは、
アートディレクターのニルス・トーソンだ。

彼は14歳で入社し、職人見習いとして働きながら、
同時に王立芸術学院でデザインを学んだ苦労人だ。
そんな経歴を持つニルス・トーソンだからか、
新ブランド「テネラ」のデザイナーとして抜擢したのは
学校を卒業したばかりの若い女性6人だった。

彼女たちにのびのびとした表現の場を与え、
自由な感性を発揮させた結果、
今でもコレクターを魅了してやまない
まったく新しいデザインシリーズが誕生した。

テネラという名前には、
繊細でやさしく未完成な若々しさという意味がある。

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小野麻利江 16年1月24日放送

160124-04
Thermos 
北欧のはなし アルヴァ・アアルト

フィンランドの国民的建築家、アルヴァ・アアルト。
彼が設計した建築物や家具はいずれも、
フィンランドの自然の風景から
インスピレーションを得ていた。

たとえば、代表作の一つである、
ヘルシンキの「フィンランディアホール」。
トーロ湾を望むその白い大理石のホールは
フィンランドの海や湖に立つ波をイメージした、
ゆるやかなカーブを持つ窓が印象的。

自然の世界をたたえることで、
さらに人間味のある社会を創造することができる。
そんな信念を持っていたアアルト。

こんな言葉も、彼は残している。

 形には中身が伴っていなければいけないし、
 中身は自然に繋がっていなければいけない。

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薄景子 16年1月24日放送

160124-05
Olof S
北欧のはなし 皆川明

北欧の物語を感じさせる
テキスタイルファッションブランド、
「ミナ ペルホネン」。

そのデザイナー、皆川明は、
初めてスウェーデンを訪れた時、
ショーウインドーのシャツに強くひかれて
一軒の店に立ち寄ったという。

絵画のように美しい色に染められた、麻や綿のシャツ。
店の向こうのアトリエで、ミシンをかける女性。
目の前で確かに作っているシャツが、
やがてウインドーに飾られる、その一着の大切さ。

そんな鮮やかな感動を、
自分の店の中にカタチにしたいと強く思った。

都会の中に緑と空を感じる、初の直営店には、
皆川が旅の中で見つけた物語のあるモノが置かれ、
旅で出会った感情が布の中に刻まれる。

彼は言う。

 これからも少しずつ、
 旅のカケラを置いていこうと思っている。

その思いはきっと、ミナの服を着る人々の心を
遠くのどこかへ、連れていってくれる。

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小野麻利江 16年1月24日放送

160124-06

北欧のはなし オーディンの箴言

「オーディンの箴言(しんげん)」というものをご存知だろうか。
それは、中世の北欧の海を制していた
ヴァイキングが残したとされる名言たち。

164連からなるこれらの詩の内容は、
荒くれ者のヴァイキングらしく、酒にまつわるものが少なくない。

たとえば、

 人の子にとって、ビールは、そう言われるほど良いものではない。
 たくさん飲めば、それだけ性根を失うものだから。

と、ビールの飲みすぎをたしなめたり。

 酒杯を手に持ったきりにするな。酒はほどほどに飲め。
 必要なことだけ喋るか、そうでなかったら、口をつぐんでおけ。

と、酒気帯び状態でのおしゃべりに、注意を促したり。

 宴会場を飛び回るのは、忘却の青鷺といって、
 人の心の分別を盗むものだ。

と、酒の席で色々な人と話す危険性を諭したり。

新年会も、そろそろ打ち止め。
これらオーディンの箴言が身にしみている方も、
きっと多いことだろう。

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