小野麻利江 16年3月27日放送
桜のはなし 小野小町
花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
平安時代の女流歌人・小野小町の、有名な和歌である。
春の長雨が降る間に、桜の色はすっかり褪せてしまった。
私の美しさも、物思いにふけっていた間にすっかり褪せてしまった。
と、散りゆく桜に、人の世の無常を重ねている。
小野小町が本当に、美貌の持ち主だったか。
その真偽は確かめようもないが、
紀貫之が小町を六歌仙に選び、
彼女の歌に次のような批評をしたことが、
「小町美女伝説」の発端とも言われている。
いはば、よき女の、なやめるところあるににたり。
「内省的な美女のような歌」と紹介された、小野小町の歌。
時が移り、数えきれない回数の桜が散り、
歌の美しさは、小町みずからの美しさへと、昇華した。